『イニシエーション・ラブ』を映画化するにはどうすればいいのか?
『イニシエーション・ラブ』の映画化について考えてみた。
乾くるみ小説「イニシエーション・ラブ」映画化! 松田翔太×前田敦子×木村文乃で三角関係 | cinemacafe.net
『イニシエーション・ラブ』が来年映画化するということで「ラスト2行はどうするんだ!」とちまたでは話題になっているようです。読んだことなかったので、この機会に読みました。僕の感想はこのエントリーの主題ではないので書きませんが、どうやって映像化すのか?を少し考えてみることに。
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【叙述トリック映像化で観客が期待することは?】
■原作を知らない人
僕のように映画化の機会に読むという人もいるかもしれませんが、もちろん読まないで映画を先に見るという人もいる。そう言う人は原作に囚われず「どんなドンデン返しがまっているのか」という期待があります。だから、最後に「びっくり」出来れば、どんな方法でもいい訳です。その後、原作読んでどう感じるか。どちらが上手いか?という楽しみ方ができる。
■原作を知っている人
恐らく、この映画を見る多くの人は「原作を知っている人」だと思います。原作は10年前ですからね。だから、オチに対して「どうやって映像化するのか?」「どこを改変したのか?」という期待があると思います。多分、原作を改編すると「上手いな」と感じる人や「原作改変(改悪)しやがって」と思う人が出てくる。
多分、製作者側は後者の人を狙ってコレを企画していると思う。
100万部売れて広く知られた原作なので、宣伝費を多額投資しなくても自然に広がっていく。
ここから本作のネタバレについて触れるので、見ていない方はなるべく見ないでください。
【映画化について考える】
■「原作から大きく変えない」ことを前提にした場合。
「POVを取り入れる」
まず、一番始めに考えたのは「POV(主観映像)」の技術を取り入れること。
POVであれば原作をなるべく変えないで映像的”快楽”が味わえるのではないかと考えた。
本作はAサイド、Bサイドの二章制の作品。
Aサイドから主人公視点のPOVを使用するが、最初の居酒屋のシーンなどの大事なシーンでは主人公の姿を印象的に映す。
そして、Bサイドに入ったら、主人公を映さない。
映したとしても暗いシーンや、ロングショットで服装が確認出来るくらい。
もちろん正面からのシーンは控える。
Bサイドに入ったときに、よくドラマとか映画で見るような「○○年後」といったテロップなり演出を「○○年 6月」のようにする。
○○年と意識付けることで、Aサイドから何年か経っているのだなと思わせる。
これは嘘ではない。本当のことを言っていないという演出。
そしてラストで、名前を呼ばれ男が振り返る。
「(Aサイドで見ていた人と)違う人じゃん!」ってなれば成功。
ただ、考えておいて自分で言うのもなんだけど、欠点があって、映像としてごまかせるかもしれないが、役者の”声”なんかはごまかせない。同じような声を持った人でも、明らかに違和感が出てしまう。
じゃあ、どうやって克服するか?
1)例えば、ナレーションを導入してみる。
これやると、二人の会話シーンに違和感が出てくるなあ…
心の声的な使い方ならまだいいかも…
2)思い切って声は一人にする。
映像的快楽ではなく嘘をつくことになるので、ちょっとなあ…
解決しなければならない問題はあるけど、なんとなくPOVなら現実的な気がしないでもない。
■原作から大きく変えた場合
映画オリジナルで考えれば、いくらでも方法なんかは思いつくんじゃないだろうか。
過去に叙述トリックを使った原作を映画化した中で『ハサミ男』がある。
以下『ハサミ男』(小説/映画)『ファイトクラブ』『シックス・センス』『ユージュアル・サスペクツ』のネタバレにふれます。
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『ハサミ男』は、女子高生を絞殺した後、喉にハサミを突き刺して死体を飾る殺人事件が多発し、それを解決して行く話。原作では「ハサミ男」という言葉の先入観から、犯人を男と断定してしまうのですが、実は犯人は女だったというトリック。
映画では『ファイトクラブ』の方法を使って、あたかも二人の人物(男と女)が存在しているかのように見せ「犯人は二重人格でした」というトリックが仕掛けられている。『シックス・センス』なんかもそうですけど、それまで実在していたと思っていた人物が実は存在していなかった!という映像を駆使したトリック。叙述トリックを映像化でしか味わえない快楽のトリックを使う。なかなか悪くないなと思います。まあ、原作読んでいると数分でネタわかると思いますが。
映像的快楽でクラッとくるのが、これまた有名な『ユージュアル・サスペクツ』とか。話を語らせている当の本人が、実は犯人でしたー!あらびっくり!と言ったトリック。ただ「犯人が犯人を見ているというのを映像で見せるのはズルい」とよく突っ込まれる作品でもある。そもそも犯人が語っているので、別にいいじゃん派。犯人が密室で語ることが現場で全て集束し、最後のウォーキングときたら気持ちがいいし、僕は結構好き。
『ファイトクラブ』『ユージュアル・サスペクツ』らの作品群は、二人以上だった人物が、実は一人だった的なトリック。『ハサミ男』は思い込みによる逆転。『シックス・センス』は実在しないものの映像化。だけども『イニシエーション・ラブ』は、一人だと思っていた人物が二人になるんだから、こりゃ大変だ。映像で驚かすには、主人公を曖昧に撮らないといけない。
後は顔をどう撮るか?の疑問点はあるけど、マユは主人公のダサいファッションを指摘しているので、格好は全て同じにしてしまうのがいいかもしれない。顔や声に関する処理方法は難しいが…
それと完全に原作変えてしまうことになるが、例えば、あのカップルたち以外に第三者を導入する。その第三者がストーリーテラーになって彼の視点で物語を進める。ただ、そうするとカップルたちのプライベートなあれとかこれとかが…
【まとめ】
原作を変えないでかつ大嘘をつかず映像化による快楽が得られるのは、やっぱしPOVを導入するってのがいいのかな〜と思います。ただ、色々と解決しなければならない問題点が山積みの気がしますので、なかなか難しいかも。さあ、映画化どうなりますかな〜。おわり