2017年映画 裏ベスト10
年末年始に熱を出して三が日は寝込み、仕事が始まれば四方八方からの依頼に追われて年末に書いていた記事を今更ながら公開。ツイッターには書いていたけど、裏ならぬ旧作ベストです。順不同
『座頭市喧嘩太鼓』三隅研次(1968)
『god sobaki』セミョーン・アラノヴィッチ(1994)
『プリンス・オブ・シティ』シドニー・ルメット(1981)
『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』キン・フー(1967)
『魔王』ジョルジュ・シュヴィツゲベル(2015)
『絶頂姉妹 堕ちる』黒沢直輔(1982)
『ボクシング・ジム』フレデリック・ワイズマン(2010)
『西部の人』アンソニー・マン(1958)
『競輪上人行状記』西村昭五郎(1963)
『あした晴れるか』中平康(1960)
【特別枠】
『話の話』(爆音上映)ユーリー・ノルシュテイン(1979)※再見(スクリーン初見)
あなたが普段体験しない事柄について「懐かしい」と感じたとしよう。普段体験しないのでほとんどないこと。または初めての体験だ。それが「懐かしい」とはどういうことなのだろうか?私自身ついこの前もそのような体験をすることがあった。出張である田舎町でさびれた商店街を見たとき、胸が締め付けられるようなさびしさ、懐かしさ、といった気持が浮かび上がってきた。私は新潟に母方の実家があるのだが、幼少期から関東(そのほとんどが東京)で過ごしていたので、新潟の記憶はごく少ないもの。この正体は何なのだろうか?断片的な記憶が、体験したこともない、懐かしい記憶が走馬灯のようにやってくる。ノルシュテインの『話の話』はまさにそういった映画だ。オールタイムベストをスクリーンでしかも爆音で体験できてよかった。
『座頭市物語』は見ていたのだけど、三隅のシリーズもの(『子連れ狼』や『眠狂四朗』)と比べて面白くなかった印象が強く、真面目に追ってなかったのだが、改めてシリーズ通してみてみると結構面白くてここまで見ていなかったことを後悔した。三隅だけに限ってみると本作と『地獄旅』がよかった。
セミョーン・アラノヴィッチ『god sobaki』は眼福映画といったものだろうか、とにかく全シーン素晴らしい。(語彙のなさ)歳の離れたカップルの逃避行もので、原子炉の被害によって封鎖された村で生活する物語。日常からときはなれた「ここではないどこか」へ連れて行ってくれるような映画だ。
『残酷ドラゴン』同じくキンフーの『侠女』後半のブリブリサイケデリックなシーンがこちらにもあったし、スクリーンで見たのでよりやかましく素晴らしかった。ちょっと西部劇感がある。
『プリンス・オブ・シティ』これはすごかった。『インファナル・アフェア』やリメイク作『ディパーデット』の潜入捜査モノであるが、「暴力性」だけ取ってみればこちらに軍配が上がるだろう。ただ、暴力といっても実際のアクションとしての暴力はさほど多くはない。にも関わらず、フィジカルにビシビシと伝わってくる。人間が景色に惹かれるのは(圧倒されるのは)、景色の持つ暴力性と同じである、といったことと似ているような感覚だろうか。このあたりは煮詰めて考える必要がある。
『西部の人』アンソニーマンは神の領域。『シャロン砦』も大好きだが、高さとシネスコの横演出を駆使した三つ巴の攻防戦にはびびった。
『競輪上人行状記』人生なんて救われない。人はどこまでいっても孤独である。物語の最後に救いはいらない。とにかく自分好みの作品。
『絶頂姉妹 堕ちる』80年代東京の雰囲気が伝わってくる映画。男女の交わりの変化についてみると面白い。黒沢監督だと『ズーム・イン 暴行団地』もかっこいい映画でよかった。当時の街の様子や風景が伝わってくる映画は好き。
『あした晴れるか』いまのところ中平ベスト!!スクリューボールコメディの傑作であり、なによりも芦川いづみのかわいさったらオールタイムベストだろう!!
※ボクシングジムと魔王は個別記事を書いているので割愛します。
最後に2017心霊ビデオでさようなら。