2017年新作映画ベスト10

毎年同じようなこと書いていますが、あっという間に今年も終わってしまいます。見逃した映画が山ほどあるような気がしますが、恒例のベスト発表。2017年に見た新作映画縛り。一度渾身のベストを記事を作ったのですが、はてなのダメサーバーに弾かれたようですべて消去になってしまい、一からテキトーに作ったのでごめんなさい。

  1. A Ghost Story
  2. Everything
  3. ほんとにあった!呪いのビデオ71
  4. わたしたちの家
  5. 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1
  6. 人生タクシー
  7. 女神の見えざる手
  8. 夏の娘たち〜ひめごと〜
  9. 浮き草たち
  10. 西遊記2〜妖怪の逆襲〜


ベストはギリギリまで悩んで僅差で『A Ghost story』を選出しました。この映画おもしろいのが、ケイシーアフレックが演じる幽霊の存在が、白いシーツをかぶっているだけなので実は誰でもいいのではないか?といった点です。というのも、この幽霊という概念は最初こそアイデンティティー的なものが感じられますが、長く生きていると(実際死んでいるのですが)記憶が薄れてくるということ。他の幽霊と区別がつきませんし、地縛霊のように家に住んでいますが、人間から霊という存在にどんどん移行してしまうんですね。しかしながら、冒頭のルーニーマーラの白い背中、白い紙に書かれたメモ、純真無垢な少女と、白いものにつながってしまうといった感動がある。後半はずっと泣きながら見ていました。来年はスクリーンで見ることができると思うので、それまた楽しみなのです。

新千歳空港アニメーションフェスティバルで鑑賞したデヴィッド・オライリー『Everything』には心底びっくりさせられました。ゲーム紹介というかプレイ画面がそのまま短編アニメーションになり得てしまうという可能性。単なるプレイ画面がアラン・ワッツの語りによって、映像に没入でき、愛おしい時間を演出してしまう。本ゲームはあらゆる視点を動物、素粒子、植物、銀河系に憑依することで体験できるといったもの。よく遠くから見ればなんでも綺麗に見えるといった言葉があると思いますが、ミクロレベルで世界を覗き込むことで綺麗に見えたものの中でいくつもの抗争が起きている。まるで調和していたようで実はまったくそんなことはない。といったことが目に見えてきます。また、優劣関係なくあらゆるものに憑依できることは、いわば世界は等価なんだといったことでもあると思う。すべての価値が同じ時間の中で存在している。さまざまな可能性を引き出す素晴らしいノンナラティブアニメーションです。来年1月にイメージフォーラムで公開されるようなのでぜひにといった感じ。

今年は好きだった心霊ビデオシリーズの『監死カメラ』が終わってしまったので残念だったのですが、本家の『ほんとにあった!呪いのビデオ71』がやってくれました!収録されているすべての作品が一定の水準で保たれている時点ですごいのですが、特に『かくれんぼ』はオールタイムベスト級でやばい。霊障の起こるタイミングと、霊障とカメラのパンによる運動の創出が今年のどの映画よりも瞬間的なポテンシャルの高さを持っている。思わず、ビクっと身体が反応してしまう一瞬の出来事。でも、この一瞬のために心霊ビデオを見ている節があるな〜と僕が心霊ビデオに求める要素がすべて詰まっていました。また、『闇動画17』に収録されている『魔窟2 分離』も同シリーズ8の『邪教』を感じさせる反復によるめっちゃ怖い怪作でした。来年もこの水準の心霊ビデオに出会いたいですね。

青山シアターのPFF特集で鑑賞したわたしたちの家はこれまでの個人的な映画の記憶がフラッシュバックしてくるような映画だった。切断/接続を必要とする映画において、本作は重要な作品になるだろう。来年劇場公開されるらしいし、卒制だからまた藝大DVDに収録されるかな。こちらも感動させられた映画でした。

清原惟『わたしたちの家』(2017)感想 - つぶやきの延長線上

今年も『ルーのうた』、『リリカルなのは』、『SING』、『傷物語』とアニメ映画は豊作だったと思います。そこにきてクリティカルにガッツにハマったのがエウレカセブンでした。編集とナレーションによって元あった素材がどのようにでも新たな可能性が生まれる。これほどまでに感動的なものはあるだろうか、もちろん物語的にもファン目線でいっても素晴らしいのですが、編集の可能性をまた感じられてよかったのです。いくつもの可能性といった視点であれば『打ち上げ花火』のアニメ化もよかったですね。

あの時のこと、あの子のこと、俺が見つけた大切なもの――『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』感想 - つぶやきの延長線上

パナヒによるタクシー珍道中…『人生タクシー』はつい見ながらプププと笑いがこぼれる楽しい映画でした。何が素晴らしいってタクシー内でばかばかしいやりとりをしておいて、ラストの長回しでバババッと鳥が横切るんですよね。映画的というと何が映画的なんだ?って話ですが、「なんかこれめっちゃ映画っぽい」って感じたんですよね。個人的な趣味の話を映画的なんていうのもアレなんですが、そこに映画を感じたんですね。理屈なしにね。

ジェシカチャスティンが好きなので見に行った節もあるのですが、まるでアーロン・ソーキンの脚本のような畳み掛ける会話リズムにやられた女神の見えざる手。観客をどこへ連れていってしまうのか?と思わせるような、アップダウンの激しい脚本に映像が見事に結びつき、爽快感あるラストまで見せられてしまう。最近何か面白い映画なかった?と聞かれたこの作品を真っ先にあげるでしょう。パンチ力のある映画でした。

夏の娘たち ひめごとは田舎の閉鎖的な〜物語が〜とかいくらでもいいようがあるのでしょうが、画面的にいえばとても気持ちよく見れました。堀監督は『弁当屋の人妻』(別名『SEX配達人 おんな届けます』)のカウンター越し切返しショットが愛おしく大好きなのですが、本作は彼のフィクション作品の中でもベストクラスじゃないだろうか。(残念ながら『天竜区』シリーズは見れていない)もっと新作を見ていたかった監督さんでしたが、それは叶わずでしたね。

今年はネトフリの大躍進でしたね。昨年フォロイーさんが褒めていて気になっていた『浮き草たち』をやってくれるなんて!ボーイミーツガール好きにはクリーンヒットですね。夜の遊園地シーンが目に焼き付いて離れません。他人の家に勝手に上がり込んで着せ替えをしたり、自転車を盗んで走り出したり、ずっとキュンキュンしてしまう。また、都会/郊外での編集リズムを変えているのも見ものでした。

少し遅れてきたボーイ・ミーツ・ガール――アダム・レオン『浮き草たち』感想 - つぶやきの延長線上

チャウシンチーによる1作目も傑作でしたが、ツイハークが監督することでツイハークワールドが展開された西遊記2』。ツイハークの映画はツイハークの世界での論理性といいますか、まったく現実世界では起きなさそうな現象が繰り広げられるのでデタラメに見えるのですが、これぞ映画の醍醐味ってな感じで。映画内で整合性が取れていますし、大小の演出など本当に巧いです。何よりもツイハークのアクションは楽しい。今年もツイハークの映画が見れてよかった。

終わって見れば今年もたくさん面白い映画に出会えたと思います。また来年もたくさん映画みたいなー。以下はオマケです。

  • 次点というか他の好きな映画(順不同)

ジェーン・ドウの解剖
魔法少女リリカルなのは Reflection
監死カメラ17
闇動画17
放送デキナイ死ノ動画9
WE ARE X
ローサは密告された
劇場版SAO
Endgame
夜明け告げるルーのうた
シング/SING
傷物語 冷血篇
マリアンヌ
ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち
皆さまごきげんよう
スパイダーマン:ホームカミング
ザ・ベビーシッター
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択
呪【ノロイエ】家
アイ・イン・ザ・スカイ
キングコング
イップ・マン継承
トリプルX再起動
ライフ・ゴーズ・オン
監死カメラ17
闇旅3
ザコンサルタント
ドッグ・イート・ドッグ
エンド・オブ・トンネル
ベイビー・ドライバー
息の跡
コクソン
バンコクナイツ
サリーを救え
南瓜とマヨネーズ

上段で触れたものもあるのでコメントは省略します。

  • 面白くなかった映画(順不同)

ネオンデーモン
ミューズ・アカデミー
ドクター・ストレンジ
グリーンルーム
スプリット
パーソナルショッパー
美しい星
リベンジリスト
密使と番人
ウィッチ
メアリと
KUBO/クボ 二本の弦の秘密


こちらは軽く触れます。『ネオンデーモン』レフンの映画にノレたことがないので今回もさっぱりでした。エルファニングはかわいいのだけど、ストレートにジャッロ映画をやればよかったのでは?感が。ドクター・ストレンジ回転を主軸に語られうる映画だと思ったが、どうもVFXと身体のシンクロやズレへの意識が不足しているように思えた。グリーンルーム見づらいアクションと初期衝動のなさに萎える(ヘッドショットは悪くなかった)。『スプリット』シャマランは基本的に好きなのだが、今回初めてノレなかった。ホラー演出(アクション:タイミング,緊張/弛緩)も空振り、物語も空振り、クロスオーバーも空振り。空振り三振。『パーソナルショッパー』アサイヤスが心霊ビデオのようなことをビシッとした画面でやってるって感じで興味が持てず。『美しい星』音楽はよかった。『リベンジリスト』エルム街の悪夢3』を期待したのだが…。『密使と番人』三宅唱の新作には本当に落胆させられた。教科書みたいな映画だった…。『ウィッチ』暗くて目が悪くなりそうだった。『メアリ』演出家としての実力のなさが表れてしまった。『KUBO』幾ら技術が高くても的確な演出やカメラワーク(ポジション)がなされて初めて面白くなるはず。ダイナミズムのなさが技術(ストップモーションアニメーションという手法とストップモーションアニメーションとCGの融合(ハイブリットアニメーション)を台無しにしてしまっている。

ほんとにあった!呪いのビデオ 71 [DVD]

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人生タクシー [DVD]

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夏の娘たち ひめごと [DVD]

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西遊記2~妖怪の逆襲~ [Blu-ray]

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