この暑い夏に見た映画
簡単に記入できてしまうということから、フィルマークスの利便性に甘えてしまい、なかなか映画の感想を書けていないので、たまにはブログにでもアップと思い、面白かった/面白くなかったは別として印象に残っているものを挙げてみる。
前々から見たかった映画のひとつであり、レンタルはないのかな?と4,000円以上するソフトと睨めっこしていたのだが、ツタヤディスカスを覗いて見るとレンタルがあるじゃないか!これは、実店舗に行かないでネットレンタルのみで生活している弊害だ…と悔やみながら早速レンタル。アンソニー・マンのシネスコ/カラー作品であると、『シャロン砦』の横長画面への人物配置の巧さ、また上下ナナメの攻防戦といい恐るべき実力をしかと目に焼き付けているが、『西部の人』はそれと同様またはそれ以上の実力を持った作品であると確信。連結列車の横長の攻防戦、ゲイリー・クーパーが小高い線路脇から、崖へナナメに落ちていく一連の運動。終盤のゲイリー・クーパーが画面前景と画面後方から挟まれる銃撃線といい、ナナメの使い方が恐るべきレヴェルで繰り広げられる。とんでもない映画を見てしまった。
- 『夏の娘たち〜ひめごと〜』堀禎一,2017
この夏亡くなった堀監督の遺作。『天竜区』シリーズなどのドキュメンタリーは見たことが無いのだが、『弁当屋の人妻』のカウンター越しの切り返しの反復には涙なしには見られないほどの傑作であり、大好きな一本だった。最新作についは、地元に帰ってきた男を起点とし切断された関係がまた接続していく、といった映画であり、カット割りからのアクションが気持ちよく炸裂する映画だった。新作ベスト候補。
- 『ELLE』ポール・バーホーベン,2016
『ブラックブック』は何とも魅力的な映画であったが、新作には全くノレなかった。こんなことは誰も書いていないので多分僕の見当違いなのだろうけど、ファーストショットから画面がボヤけた白い画面が続いていき、まったく締まりのない画面でまるで度が合っていないメガネをかけているような状態でとてもじゃないけど見てられなかった。内容的には幼いころのトラウマを抱えた者が、自力で何んとか会社を立ち上げ、様々なトラブルに遭うが、人として生きている様子を見せる…バカ息子など見放せずに、付き合いを続けていく…といった人を恨みながらも見捨てられない人間の映画…。どうも好きになれなかった。演出を見ても「侵入者」といった面白いアプローチが出来そうな題材が活かされているとは思えず、拷問のような2時間だった。優しさなんか見せてほしくない。
『ELL』の後に見たせいか、この映画の持つ清涼感にただただ身体を任せていくだけのような見方をした。特質して何か語る必要があるかといわれるとないのだが、役者がとても素敵に撮られており、それだけで素晴らしい。
- 『ウィッチ』ロバート・エガース,2015
陰鬱な森に住むある家族に起こる悲劇を描いたオカルトホラーもの。陰鬱な雰囲気は画面を暗くすれば、確かに見たまま陰鬱になるのだが、何も見せないで映画が面白くなるわけでもなく、苦痛な90分であった。今年の心霊ビデオを除いたホラー枠は『ジェーン・ドウの解剖』くらいしか出てこないのだろうか…
- 『ライフ・ゴーズ・オン』ケリー・ライヒャルト,2016
ケリー・ライヒャルト新作。やっぱりDVDスルーになったかと。カット割り(編集)が巧みであり、カットを丁寧につなげばアクションになるという見本のような映画。特にクリステン・スチュワートの体験する物語でのカット割りおよび夜の撮影が見事でした。
- 『パターソン』ジム・ジャームッシュ,2016
反復と差異の映画。パターソンの奥さんが描く円のデザインや、いつもと変わらぬ日常を腕時計や職業的運動(バスの運転手)などで、「環」の主題を表象させ、出来事によってズレていき日常が崩壊していく様を描く。技術に徹した映画なのだけど、あまりノレなかった。『リミッツ・オブ・コントロール』のような、これから何が始まっていくのだろうか?といったわくわく感が無かったともいえるが、ジャームッシュにしてはやや映画が纏まりすぎのような気がした。ツイッタ−で「散文家ジャームッシュにしては音楽と映像が詩的すぎるのは疑問」と語っている人がいて、ああなるほどな、とかわかったようなわかんない様な。
自分の趣向とは違った映画であるが、これは面白かった。カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』のコピーは如何なものか?と思うのだが、古典的な犯罪映画のように巧い。映画をたくさん見ている人ではないと作れない映画だろう。仕事終わりにテレビのロードショーでやってたら見入っちゃうな、と思うタイプの映画。何よりもヒロインのリリー・ジェイムズちゃんがかわいかったですね!
- 『皆さま、ごきげんよう』オタール・イオセリアーニ,2015
イオセリアーニの映画ひさびさに面白いなと思った。ローラースケート少女の盗人ぶりが面白い!パンクな映画だと思った。ただ、1時間くらい経ってから中だるみをしてくるので、少し残念な気も。
- 『甘き人生』マルコ・ベロッキオ,2016
やっぱ『ポケットの中の握り拳』のような初期衝動で撮られた映画が恋しい、なんだかベロッキオ振るわず〜!って感じで全くノレなかった。
『ロストエイジ』を予習して満を持しての『トランスフォーマー』でしたが、マイケルベイの過剰な火力による爆発芸はここまで来たかと唸ることに。どうなるかと思ったが、剣をふるうシーンから映画が躍動してきて、感動的な側面を見せる。ああ、今のアメリカにはマイケルベイがいるのだと、ちょっぴり涙腺がゆるむ。取ってつけたような洗脳や開放があまりにもどうでもよくて素晴らしい。
- 『ボヤージュ・オブ・タイム』テレンス・マリック,2016
『ツリー・オブ・ライフ』でシネコンに来た客をひっくり返したテレンス・マリックであったが、今度はほぼ全編環境映画となってしまった。神の孤独な惑星との向き合いなのだろうか。ここまでくるともうひれ伏すしかないが、「テレンス・マリック」といった作家から離れて本作を評価できるか?というと僕にはそんな技量がないのでよくわかりませんでした。
- 『ザ・コンサルタント』ギャビン・オコナー,2016
「何だこのシナリオは?」と闇に葬られてしまいそうな設定を映画にした感動がある。今年だと『クリミナル』にも感じましたが、どこかシナリオとズラしてきている気がする。(レイアウト)とか。ただ、バカなのでここで思考停止。楽しめた。
- 『明日に別れの接吻を』ゴードン・ダグラス,1950
兄を助けに脱獄に加担した妹が、兄殺しにいいように扱われて犯罪へ加担していってしまう。何よりもグッとくるのは最後に打ち殺す瞬間「明日に別れの接吻を」っていうシーンで、ついホンサンスの『よく知りもしないくせに』を見た時のように、「あっ!いった!いった!」とひとり部屋で盛り上がってしまった。
- 『プリンス・オブ・シティ』シドニー・ルメット,1981
たぶんルメットのベスト。3時間もある長尺映画であるが、直接的暴力描写がそこまで多くないのに、ここまで暴力的な映画は存在するであろうか?と思うくらい暴力に満たされた映画だった。ラストの突き放した姿勢も素晴らしい。
山内重保を再見しなければならないと山内重保映画祭を家で孤独に開催。山内重保のアクション感覚ってのは鋭く、キャラクターがアクションするとき、同時に時間・空間を意識せざるを得ないような瞬間を捉える。キャラクターのデザインというか、ボディラインが美しくエロくなるのもこの人ならではの感覚というか。考えてみれば、私くらいの年でも山内重保アニメは浴びるようにみてきたので、アクションや時間・空間を意識するのは当然なのかもしれない。方法は違えど出崎さんとベクトルは似ている。作画オタクやアニメーターなら当然だろう、と思うのだろうが、山内重保アニメのキャラクターは、飛んだり跳ねたりする際、極端に身体がキュッとしまるようなデザインになり、画面いっぱい使って躍動する。そのために時間や空間といったものを意識してしまうのではないのか――ブロリーと悟空のクライマックスのゆったりとした時間。アニメx身体の関係を考えた時、山内重保は重要ではないだろうか…。この辺誰か「アニクリ7.0」で書いてほしい。募集要項貼っちゃう。
[発刊告知]アニメクリティークvol.7.0「声と身体/ 松尾衡×機動戦士ガンダム サンダーボルト」寄稿募集 #C93 - 書肆短評
- 『愛と誠』(三池崇史,2012)
さいきんの三池のなかでは見逃していた作品だったので、長かったけど鑑賞。これが思いのほか傑作だった。ぼくが武井咲が好きってこともあるが、彼女がかわいく撮られている。また、斎藤工のキャラクターも素晴らしい。ああやっぱり役者が撮れる監督だって感動した。泣ける映画。
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