スパイ戦ならぬ思考戦/西尾維新『悲亡伝』を読んだ。

西尾維新の伝説シリーズ最新作『悲亡伝』を読みました。

このシリーズぶ厚さの割に速いペースで新作が出ていたのですが、前作『悲業伝』から約1年半の時間が空いてしまいましたね。ほとんど内容も覚えていなかったし「四国ゲーム終わってたんだっけ?」くらいに思っていたのですが、空々空はなんと世界まで羽ばたいています。

今回は地球陣と戦う世界的な組織、ロシアの道徳啓蒙局が「裏切り者」によって滅ぼされたことにより、地球撲滅軍の空々空たちが世界各地の対地球陣組織を内偵し「裏切り者」を調査する物語。彼ら・彼女らはロシア、イギリス、フランス、中国、アメリカ、◯◯王国、◯◯船と各2人7組で、内偵を進めることになる。今作もこのシリーズでありがちの会話というか各自の思考がずっと続いていくので、正直言って物語が進むというより、気づいたら物語が終わっていた。という感覚が残るのではないだろうか。

主にその思考戦は7組のチーム分けに裂かれている。なぜ、空々空がこういったチーム分けをしたのか?いや、私だったらこういう風にアレンジする。とか、各個人の思いもあるのが当然である。人や立場が違えば選択も変わるというか、運というものにおいて最悪な星の元に生まれている空々空は奇しくも「生き残ること」を前提にチーム分けをしていることがわかる。仲がいい子同士を組み合わせたり…と考えそうなものだが、さすがは感情を持ち合わせていない少年である。合理的(かどうか別として)に生存率が主に重視されている。特に中国の鋼矢チームのエピソードを読めばよく理解できるだろう。

本作に限った話ではないが、頭でっかちに考えていると知らない間に裏で大きなことが、着々と進んでいた…なんてことがよくある。先日『ガールズ&パンツァー 劇場版』を見ていたが、高校生が大学生相手に脳みそフル回転して考えても罠にはまってしまうパターンがあった。ガルパンはスポーツだったが、今作は地球陣と人間の戦争である。つまり命がけの勝負だ。終盤のエピソードを含め『悲亡伝』を読むと本戦以外にも気を配る必要があるなーと、でなければ密かに動いている敵に気づかずに罠に嵌められてしまうだろうなとそんな風に思った。

516ページの瓦のような本も残すところ後、『悲衛伝』『悲球伝』『悲終伝』の3冊らしい。さてさて、実は物語シリーズのように『続』とか、ついて続くんじゃないだろうかと勘ぐったりしていますが、最長にして助長なこのシリーズも佳境に来たってことで…

悲亡伝 (講談社ノベルス)

悲亡伝 (講談社ノベルス)