のだめ以降の正統派クラシック・アニメ 『四月は君の嘘』

ノイタミナ枠の秋アニメ四月は君の嘘。原作は読んでいないんですが、久々にクラシックが鳴るアニメということで鑑賞。普段、クラシックは全く聞かない人間なのですが、「のだめ」にしろクラシックを通ってきていない人間でも、スッと物語に入り込めるように人物設定がキチンとしているなという印象。

主人公・有馬はピアノ界の「神童」とまで呼ばれたことがあるピアニストだが、ある日を境に「ピアノの音が聞こえなくなる」症状を抱えピアノからは離れて生活するようになる。そんな彼をもう一度ピアノへ導くのが、独創的な音色を響かせるヴァイオリニスト・宮園かをり。彼女は一見、性格は明るく自己中心的な人物に見えるが、寂しがり屋だったり、実は病気を患っていることがわかる。そんな彼女らの周りにいる、幼馴染みの椿は有馬を想っているし、亮太はカワイイ女の子には眼がない、でも彼・彼女らたちを裏から支えている。それに含め、ライバルたちのキャラ立ちもシッカリしているので、クラシック抜きにしても物語を追うだけで楽しい。

キャラデザのせいかもしれないが、なんとなく似ているのが3月のライオン。それ以外にも、スポ根…とは言えないが、一つのことに打ち込む姿勢。可愛いデザインにも関わらず、決してそこ抜けた明るさはなく、個々に闇を抱えている点を含め、少なくとも意識はしている?のではないかと感じた。

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

「音楽」がテーマになっている作品を映像化するのはとてもリスキーなことである。例えば、2010年の『BECK』では天才ボーカリストを映像化するとのことで、話題になったが、結局は音を出さずに表現する方法をとった。以前「イニシエーション・ラブを映画化するにはどうしたらいいのか?」というエントリーで叙述トリックの映像化について書いたが、それと似た難しさがある。観客が望むものと、監督が見せたいモノとのガチンコバトルである。まあ、『四月は君の嘘』はクラシックが題材となっているので、恐らくキャッチーなロックやポップミュージックの映像化よりはハードルが低いだろう。そもそも「クラシック」を真面目に通ってきた人は少ないと思うし、クラシックという音楽の性質上、原曲が存在した上なので音源を使えばいいだけだから。

「ピアノの音が聞こえない」ってネタ。増村保造の『音楽』って映画でも「音楽」が聞こえない精神病の女性が主人公の話がある。これが、とても面白くて増村映画でも上位だなと思うんだけど、『四月は君の嘘』のエントリーなので紹介はいつの日か…。『音楽』では音楽が聞こえない(不感症も患っている)ってのは、過去の事件(性癖)がキーになっていて、ソレを克服しなければならないってのが物語の中心。なので『四月は君の嘘』での彼と亡くなった母との関係。『音楽』では生きている人との関係だったが、『四月は君の嘘』は既に亡くなってしまった人との関係性。だから『四月は君の嘘』は、他人のサポートがあっても、それを克服するのは”結局自分自身である”という物語だ。

四月は君の嘘』2クールらしいので、年末やることないなら、ゆっくり消化するのもアリ。これをキッカケにクラシックでも聞いてみるかなーーーーーな〜んて。

音楽 [DVD]

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