話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選

昨年から参加し始めたこの企画。各話になることで作品ごとよりも、各人の好きな物語・作画・演出・性癖?(笑)があらわになってとても面白いと思います。

「話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選」参加サイト一覧: 新米小僧の見習日記

ルール
・2015年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

◼『Go!プリンセスプリキュア』第39話「夢の花ひらく時!舞え、復活のプリンセス!」
脚本:田中仁 絵コンテ:田中裕太 演出:鎌谷悠 作画監督大田和寛

Go!プリンセスプリキュア』の物語には”優等生さ”がいつもつきまとっていた。天然だけど呑み込みの速さはプリキュア一の春野はるか。社長令嬢で生徒会長で異性・同性問わず人気の海藤みなみ。母親は世界トップモデルそして自分も着実に夢に進んでいる天ノ川きらら。本物のプリンセスの紅城トワ。あまりに優等生すぎてトワがプリキュアになった以降、中だるみを感じたが、39話はその優等生だからこその演出だった。はるかの変身シーンで夢の可能性を感じた。それと、変身前のはるかの作画が「はるかさん」だろと言わんばかりの覚悟の表情。情動が作画に反映される。これぞ日本アニメ。

◼『赤髪の白雪姫』第10話「心蒼く、もっと深く」
脚本:清水恵 絵コンテ/演出:安斎剛文 作画監督:菅野宏紀

アバンの「リュウを呼ぶ白雪→鳥→リュウと鳥→鳥使いを認識する白雪」という視線誘導のカット連鎖の心地よさ。本編の肝をアバンで簡潔に表現しているのが良かった。分割の2クール目にも期待しています。

◼『すべてがFになる』第1話「白い面会」
脚本:大野敏哉 絵コンテ:神戸守 演出:黒木美幸 作画監督近藤圭一、栗原優

原作であれば『S&Mシリーズ』として繋がっていくので『すべてがFになる』で真賀田四季の人物像がわからなくても保証はあった。しかしながら今回のアニメ化は『すべてがFになる』のみ。なかなか映像表現するにも、人物の魅力を伝えるにも難しいと思ったが、大胆にも『四季シリーズ』を絡めることによって、真賀田四季という人物像が掴みやすくなっていたと思う。原作ファンとしては淡々と会話するシーンが続くので、アニメでどう表現するか課題と思っていたが、同ポジやPAN・切り返しなど意外と正攻法で攻めていた。ただモニター越しの正面切り返しなどテンポを変えてみたり、リズム付けながら不意に画面を90度傾けてみたり映像と音楽で遊んだ気持ちいい演出に満たされていた。*1その他に話数も第2話の萌絵と四季のわがまま(過去と現在)の掛け合い。第10話のアニメーションならではの表現といい、15秋で一番好きなアニメ。

◼『SHIROBAKO』第19話「釣れますか?」
脚本:浦畑達彦 絵コンテ:篠原俊哉 演出:平牧大輔 作画監督大東百合恵、川面恒介、秋山有希、川村夏生、武田牧子、容洪、徐正徳

SHIROBAKO』は今年のTVアニメでもベストクラスに好き。「現実はこんなに甘くないぜ?」とか否定的な意見も多数あったと思うのですが、僕は「リアリティである」ことを目指したのではなくて、おおっぴらに嘘をつきながらたんに夢を語りたかったんじゃないかと思った。最後までフィクション(アニメ)であろうとしたことに感動したのである。それを特に感じられたのが19話。宮森が仕事に対して疑問を持っていた回で、そのアンサーが”夢”によって語られる。いつの日か誰かが願った夢(記憶)をスクリーンを通して宮森に伝える。作品を通して誰かに何かを伝えていく、そんな願いが込められた美しい作品だと思いました。

◼『四月は君の嘘』第13話「愛の悲しみ」
絵コンテ/演出:倉田綾子 作画監督:野々下いおり 演奏作画監督:浅賀和行

「音楽ものに弱い」自負があるので、少し贔屓目に見てしまっているかもしれないが、『四月は君の嘘』13話は本当に素晴らしかった。それまで見えなかった母親の表情が明らかになる。彼女が「愛の悲しみ」を弾く理由は悲しみに慣れておくためだ。自分がいなくなってもこの子はやっていけるのだろうか、ご飯は食べれるだろうか、朝起きれるだろうか。ピアノを通してこの子が生きていけるのであれば全力で教えよう、だって彼女には時間がないから。『君嘘』は誰かと誰かの繋がりを信じるアニメだ。母親が何かを公生に残したように、きっと公生を何かを残していくのだろう。素敵なアニメでした。

◼『ミカグラ学園組曲』第8話「未確認トレジャー」
脚本:福田裕子 絵コンテ:三原武憲 演出:徳本善信 作画監督:清水博幸、徳田夢之助
安達佑輔、新井博慧 総作画監督:尾尻進矢

ミカグラ学園組曲』にはアクションよりも、赤間のポーカーフェースをキャラのデフォルメ化を組み込んで上手に演出した4話「無気力クーデター」や、星鎖の変容が面白く作劇に富んだ5話「学園ファンタジア」が好き。この8話は三角関係で”百合”を表現するのが上手かった。星鎖とエルナに距離を置くことで、星鎖が自分でも気づかないエルナへの思いが視聴者に見えてくる。物語のまとまりも一番上手い回だったんじゃないだろうか。

◼『ワカコ酒』第4話「ウニクレソン」
絵コンテ/演出:山岡実 美術監督:ゆきゆきえ 作画監督:中小路佳殻

第1話−第3話まではすでにワカコが居酒屋にいる描写から始まったが、4話は夜の街でワカコがお店を見つけることから始まる。冒頭から変化球を投げてきたかと思えば、ウニクレソンの調理シークエンスが見事。Blu-ray特典の設定資料に絵コンテが掲載されていますが、4話のコンテが一番長く紹介されている。調理シーンが長いのもあるけど、それだけ力が入った回なんだろう。そしてワカコ酒は背景美術がすごく好みで、夜の街もさすがの塩梅。それと、ウニクレソン越しのワカコの作画が見事!仕事から帰って疲れた時に見るとさらに心地よいアニメ。

◼『落第騎士の英雄譚』第10話「深海の魔女 VS 雷切
脚本:河鍋俊 絵コンテ/演出:徳本善信 アクション作監:中西和也 作画監督:よち、中西和也、明珍宇作、北原大地 総作画監督:よち、野田康行

兄を思う珠雫の心境がエモーショナルな戦闘描写に反映されている。自分のアニメ原体験でもある『幽白』を連想せざるを得ない。能力者同士の限界ギリギリまで披露される高密度なバトル描写。派手ながらも散っていく氷の描写や霧の表現など繊細に描かれている。アクションでいえば、10話と同じく中西和也がアクションを担当した4話も見事でしたが、ほぼ1話丸ごと戦闘パートにした今作に拍手を送りたい。

◼『終物語』第12話「しのぶメイル 其ノ陸」
脚本:中本宗応 絵コンテ:数井浩子 演出:岡田堅二郎 作画監督:宮嶋仁志、築山翔太
秋葉徹、山崎克之、杉山延寛、潮月一也

「しのぶメイル」はキスショット(忍野忍)が自分と向き合う物語。阿良々木が忍を背負った『傷物語』と対になる作品じゃないだろうかと思う。始まりと終わりの物語。11話で駿河が忍にいうように、向き合わなければ「物語にならない」。作品全体的にいえば他にも素晴らしい回があったのだけど、忍が初代の前に姿を現した瞬間の花が弾けたような映像表現と、坂本真綾さんの演技にやられた。まさに「物語」に負けた。キスショット大好き。

◼『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第3話「散華」
脚本:岡田麿里 絵コンテ:綿田慎也、大張正巳 演出:綿田慎也 作画監督:(キャラクター)大貫健一、大籠之仁 (メカニック)大張正巳

『オルフェンズ』はゼロ年代屈指の傑作『グレンラガン』のように、地の底に必死で這いつくばりながら生きてきた人が「空(自由)」を目指す物語。1話で三日月とオルガの関係性がバルバトスを通じて明確に提示されるが、3話ではそこにクーデリアも加わる。ローアング煽りショットで映される巨大なモビルスーツに対して、キャラクター自身がそれに負けない強度を持っている。キャラが自我を持っているから物語が始まる。血の匂いをプンプンと嗅ぐわせていながら美しく詩的。来年も楽しみ。

◼選外
・『戦姫絶唱シンフォギアGX』 第1話「奇跡の殺戮者」
・『響け!ユーフォニアム』第5話「ただいまフェスティバル」
・『学戦都市アスタリスク』第8話「二人の休日(2)」
・『Go!プリンセスプリキュア』のその他

シンフォギアGX』は全話通すと正直あまり好きではないので(1期はテン年代ベストクラスだと思うけど)、選ばなかったのですが1話はおいおいと…宇宙飛んでいって『ワイスピ』よろしく『スピード』で着地、と度肝を抜かれた。『ユーフォニアム』はこちらとやっぱり8話がすごかった。全体通しても「意識すること」(成長)が吹奏楽とマッチしている。1話で意識しなかったことが、練習(息を吐くこと)によって、意識して言えるようになる成長物語。ただ、ピンボケ使いすぎて絵的に苦手だったのが選外理由。『アスタリスク』は同時期に放送された『落第騎士』と比べると戦闘パートが退けてみえるが、日常パートの気持ちよさは抜群でした。『Go!プリ』からまだまだ選びたい回はたくさんあったのですが、1アニメ1話縛りなのでこんな結果に。『Go!プリ』各話選は放送終了後にやろうかなと思っています。

◼まとめ
今年は新作アニメを1クール5,6本は見ていきたいな、と思いながらも例年通りにあまり見れませんでしたね。プリパラあたりも見たかったのだけど…。dアニメやバンダイチャンネルなどで旧作を見たり、先日には出崎の『ジャングル黒べえ』発売もあったりと時間を取られてしまってなかなかね。来年も素敵なアニメに出会いたいものです。ではまた。

アニメスタイル006 (メディアパルムック)

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