「キャラ×キャラ=世界」の構図 ー 西尾維新『掟上今日子の備忘録』を読んだ。

人は忘れたくても忘れられない記憶を引きずっていたり、逆に、大事なことをスッカリ忘れてしまうこともある。後者の場合は、ちょっとしたキッカケで朧気だった記憶がくっきりとすることがある。でも、何をどう努力しても「一日で記憶がリセットされるとしたら?」そりゃーこわいし、自分が何者なのか、何をすべきかなんて絶対にわからない。それなのに「探偵なの?」な本の話。



記憶が一日しか持たない人が探偵をやっていたら?と、一見悪いことはあっても良いことはなさそうな「一日しか記憶できない探偵」を題材としたのが『掟上今日子の備忘録』。

ストーリーは、何故かいつも事件に巻き込まれ、犯人だと疑われてしまう隠館厄介が、事件解決の為、「忘却探偵」掟上今日子さんを呼ぶといったもの。

正直、ミステリ部分については、重きを置いていない。
つまり、あくまでも「西尾維新西尾維新である」ということで、物語の前に絶対的な「キャラ」の存在がある。「キャラ」の為の「物語(世界)」といったような作り方。そして尚かつ、「キャラ」が生ききるように設定を作り、それにそって物語を構築する。

一日で記憶をリセットされるのは、探偵として向いていないように見えるが、それ故に「絶対機密」な場所にも潜り込めるというメリットが生まれる。(第一話「初めまして、今日子さん」)ただ、逆に明日の予定や明後日の予定など「未来」に対する安心感はない為、彼女を知っているものであれば、普通なら必要とする「予約」はしない。だから、基本的にはその日起きた事件を片っ端から請け負うというスタイルが確立される。

そのキャラ特性を活かすにも、その日に解決しなければならないことを、わざわざ探偵を呼んで解決しようとすることはなかなかない。ここでキャラを活かす為に、主人公の存在がある。

隠館厄介は、突如事件に巻き込まれてしまう体質の持ち主。まともな職に就ける訳もなく、すぐに退職させられるポストにしか就けない。その為、身の潔白を証明する為には、なるべく早く、もっと言えば、「その日」のうちに解決せざるを得ない。そうなると、掟上さんとの相性はバッチリだ。

本作はキャラを活かす為のキャラ という構図が完璧に出来ている。

「戯言」シリーズであれば、主人公「ぼく」と僕様ちゃんこと「玖渚友」の関係性。
「物語」シリーズであれば、「阿良々木 暦」と「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」の関係性。

に似たようなものだろうか。

お互いにとって必要な存在。

肝心の内容は短編と中編を掛け合わせたものです。「忘却探偵シリーズ」とシリーズ化するようで15年春には『掟上今日子の推薦文』が発売されるとのこと。恐らく今後もこのスタイルでしょうが、大きなテーマとして、「なぜ掟上さんは一日しか記憶できないのか?」「記憶出来ていた頃の掟上さんは何をしていたか?」というミステリが展開されて行くと思います。

題材に触れ内容に全く触れていないボンクラ記事ですが、最後に言っておくと、ミステリ要素は決して強い訳ではなく、あくまで「キャラ」。西尾維新ワールドが好きな人は是非だし、結構読み易い(2〜3時間で読めた)。ちょっとした息抜きにはいいかも。気楽にどうぞ〜。以上