血まみれヒロインここに誕生『パズル』※ネタバレあり

監督は『先生を流産させる会』の内藤瑛亮、ヒロインは夏帆。と一瞬聞くとどんな組み合わせじゃ?と頭をひねるけど、これぞ『キャリー』のクロエたんに挑戦状を叩き付けた血みどろ映画の決定版です。まだ、三月ですが、確実に今年のベスト級でしょう。僕の好きな要素が満点で備わっている。ヨダレダラダラ…でした。

■あらすじ
郊外の高校で、中村(夏帆)という女生徒が屋上から飛び降りる事件が発生する。それから1か月後、同じ高校をマスク姿の集団が占拠して妊娠中である女教師に危害を加えた上に、理事長(大和田獏)と3人の男子生徒が失踪(しっそう)してしまう。異様な事態に学校や街が騒がしくなる中、一命を取り留めて入院する中村のもとを同級生の湯浅(野村周平)が訪ねて封筒を置いていく。中身がパズルのピースであることに首をかしげる彼女だったが……。(yahoo映画より)

この映画「夏帆が血まみれになる」という点を除くと凄く面白い作り込みをしています。昨年の『イノセント・ガーデン』のように、冒頭のシーンがラストに繋がる構成です。まさか、最初のシーンからラストの事件に繋がるとは予想出来なかったのですが。また、構成以外にもストーリー自身『イノセント・ガーデン』を意識しているのか、女の子が事件をきっかけに覚醒するというお話です。

まず、簡単にまとめると、「夏帆が校舎から飛び降りる」ところから始まり、そこからある街での事件を「〜日前」「〜時間前」と、ときより回想シーンを入れながらラストに繋がる構成です。そこで起きる事件とは、犯人がいくつかの「パズル」をキーに人質の命を賭けたゲームを始める『ソウ』シリーズの系譜にある作品。

残酷描写については本家よりも遠慮がないんじゃないだろうか。さらっと残酷描写を書くと妊婦を拷問し皿を投げたり*1、ラジコンに付けられた「パズル」を入手しようとするゲーム参加者にはラジコンを爆発させたり、電子レンジを「チンッ」っと落としてみたり…そして、バラバラ殺人、近○相○、飛び降り…と、「これでもか!」と、人を嫌な気持ちにさせる人殺しのデパートみたいな映画。ただ、殺人シーンにちょっとポップな音楽を当てる事で「気持ち悪いのに気持ちいい!」という感覚にさせてくれる。

そして、クライマックスのアクションシーンも見事で、そこから、エンドロールの「血まみれ夏帆+制服+ダンス」で完全にノックアウト!夏帆のアイドル映画ですよ!と高らかに宣言。

冒頭『ソウ』シリーズの系譜と書いたけれど、最初から犯人が分かっているので『ソウ』シリーズのように、犯人が判明して「ビックリ」するような感覚はないと思います。また、この映画が意識しているだろう『イノセント・ガーデン』ではパクヌチャクがヒッチコックの『疑惑の影』を下敷きに自らのフェティシズムをぶつけたけれど、こちらは核となるプロットは『イノセント・ガーデン』から頂戴し『ソウ』シリーズ的な方法をぶつける離れ業。

そして、「血まみれヒロイン」は記憶に新しい『キャリー』クロエたんへの挑戦状。「女の子がある事件をきっかけに”覚醒”する」〜のようなくだりはこの映画でも表現されているので、ビジュアル以外にも『キャリー』が内包されている。
総括すると『ソウ』シリーズを下敷きに「女の子が”覚醒”する」という様々な映画の要素を内包させ、カタルシスの雪崩のようなエンドロールへ見事な着地。しかも上映時間は90分を切っている!
実は『先生を流産させる会』は未見だったのですが、是非鑑賞したくなりました。マジで傑作です。オススメ!

*1:バシッと決まったローアングルが良かった。