キャスリン・ビグロー『デトロイト』

1960年代デトロイトで起きた暴動。その最中で起きた事件を当時の証言をもとに映像化した作品。2時間を超える長尺な映画だったが、これが思いのほか面白かった。モーテルでの警察による胸糞な強制尋問のシーンも素晴らしいが、それよりも、冒頭から夜の撮影に惹かれた。特に警察がパーティー会場に乗り込んで、黒人を理不尽にひっ捕らえたところから暴動が始まるまでの緊張感。顔!顔!顔!この映画はあくまでも顔を執拗に捉える。まるでフレデリック・ワイズマンの映画に出てくるような黒人が、警察の理不尽さに暴動を起こし店のガラスを割り自転車を盗むシーン。思わずため息が漏れてしまうような魅惑的シーン。いつどこで暴動が起こっているのだろう?とドンパチ暴動が起きていて怒り狂う「顔」が浮かび上がってくる。重要な場所(事件)を描くに外界を十分に記録しているのがとても好感を持てた。

また、ドキュメンタリーたっちなルックにぐらつくカメラ。実際にあった事件を生々しく記録するこの手法は大正解だったといえる。顔から浮かび上がる疑心暗鬼。ボタンの掛け違いから始まる人殺しの連鎖。思えば、歌手の黒人と友達が白人の女をナンパして、女たちの友達の部屋で繰り広げられるお玩具の銃遊びも見逃せない。一芝居がまるで本当に撃ってしまうのでないか?というくらい冗談に見えない。それはラジオを消してレコードの音量上げてこれを聴けよ!といった部屋に入ってからの一連のやり取りも重要な効果をあげている。前作の『ゼロ・ダーク・サーティ』よりも好みだった。