かいぶつが、あらわれた『LEGO®ムービー』※ネタバレあり

開発する者、作る者、売る者、運ぶ者…一つの会社にはそれぞれ役割が違うお仕事がある。マニュアル通りに当てはめて生産効率を上げる者や、クリエイティブな発想でこれまでに見たことも聞いたもない物を作る者。また、営業マンも100%管理されマニュアル通りに動くようにする会社もある。同じ営業マンが、マニュアルに沿って電話や訪問の回数まで管理することで効率的な結果ついてくるだろうという考え方。まあ、今回は小難しいこと考えないで、その映像に身を任せてみれば?と思った『LEGO®ムービー』の話です。

■あらすじ
エメットは、真面目を絵に描いたような性格で見た目は至って普通という、どこを取っても平均的なLEGO(R)のミニフィギュア。にもかかわらず、どういうわけか人知を超えた能力を誇り、世界を救う鍵となる人物だと周囲から勘違いされてしまう。困惑する中、謎めいたグループのメンバーに迎え入れられた上に、バットマンやスーパーマンも入り乱れる巨悪退治の冒険に出ることに。救世主やヒーローの自覚もなければ世界を救う覚悟もない彼は、行く先々で大騒動を巻き起こしていく。(yahoo映画より)

この映画の面白いところは、全てCGブロックで描かれていることなんですが、CGブロックならではというかLEGOだからこういうアクションになるんだなーってのを表現していること。レーシング中にブロックを解体したり組み直したりしてバイクや飛行機などに一瞬で変身する。変身が「トランスフォーマー」っぽくて、かっちょいいし、一瞬が山ほど積み重なることによってスピード感を作品全体に与えてくれている。

他に楽しい要素に、様々なステージと登場人物がたくさんいること。シティやウエスタン、空、海、それに「中つ国」まで現れる。そして、バットマンダンブルドア、スーパーマン、グリーンランタンまで登場してくるので、アベンジャーズ抜きアベンジャーズ・ムービーになっている。その様々なヒーロー勢揃いのなかで、奇しくもこの映画のヒーローになってしまうのが、何も取り柄が無くマニュアル通りに動く事しか出来ないLEGOのモブキャラである。

彼はヒーローとは違ってクリエイティブなことは何一つ出来ないが、一匹狼のヒーローとは違い”協調性”を心得ている。マニュアル通りにしか動けないというウィークポイントをメリットへ変換しピンチをチャンスへ逆転させヒーローになってしまう。一見、何も取り柄もない者がヒーローになるという物語に見えるが、ここで「かいぶつが、あらわれた」*1な展開になるのである。

LEGOには勿論、建設現場で働くモブキャラと同じく”作り手”が存在する。この映画は、LEGO側の物語をLEGOから観れば外部の力となる本当の”作り手”すなわち人間側の世界。二つの世界が深く結びつく物語である。この物語は、父親の趣味であるLEGOを息子なりに「こういう感じだったら面白いのになー」と、改変した世界がLEGO側の物語となっているのである。ということは、父親が”おしごと社長”ということになる。「この世界を自由な世界に」と願った息子と父親との抗争であり、こういうことは、みんなが小さい頃に経験したことがあるかもしれない。

正直、これは完全なる趣味の世界なので、世界を構築する父親の気持ちもわからないでもないし、むしろそっちの気持ちのほうがわかる年になってしまったのだけど、それ以上に、人のやったことを頭ごなしに否定しないこと、家族なら尚更、愛をもって接することが明示された家族愛映画だと感じられた。人は一人では生きてはいけないし、父親から見れば子供*2LEGOから観れば「かいぶつ」だったように、外部の力と密接に共存しているのである。それに、人を育てるには覚悟が必要で、時には自分の大切なものを犠牲する必要がある。それが愛だ。

まあ、小難しいこと考えずに映画ネタやLEGOならではの動きを単純に楽しめる作品ですので、是非、劇場で見てもらいたいですね。面白かったです。オススメです。

*1:ピンチョンの帯丸パクリですね。

*2:息子から見ると妹なんでしょうね。