黒沢清が激オシする6本の40年代ホラーのうち3本を見た。

黒沢清ファンとしては、彼が初めてホラーを自覚した『マタンゴ』だってオールタイムベスト級に好きだし、どんどん黒沢清に続け!!という感じ。それで、これまでなかなか見てなかった黒沢清が激オシする40年代ホラー6本のうち3本を見た。


レオパルドマン-豹男 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

レオパルドマン-豹男 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

『レオパルドマン 豹男』ある日ショーで使われた豹が逃げ出した…何度タロット占いをしても「凶」を引いてしまう女性。夜の街に響き渡る叫び声。豹に惨殺された女。何人もの女性が殺される。果たして犯人は逃げ出した豹なのか?と言ったような内容。この映画で見事なのは、女性が殺される瞬間を直接的に描かないところ。例えば、家のドアの前で惨殺されている中、家族は間に合わずドアを開ける前に、ダラ〜っと流れてくる血によって娘の死を知る。それと、殺されるシーンは必ず夜だったり、カスタネット、ラテン女、鉄橋の下、口紅などフェティッシュなアイテムを効果的に使っていたのが良かった。ヒッチコックがやりそうなミステリーだったかな。傑作です。


キャット・ピープルの呪い 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

キャット・ピープルの呪い 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

キャット・ピープルの呪い』少し変わった少女がいる。その子は他の子とは違い、どこか空想癖があり、なかなか他の子と相容れない。ある日少女は”見えないともだち”と仲良く遊ぶが…と言った抑圧された少女が空想迷い込むお話。私的オールタイムベストの『パンズ・ラビリンス』や『乙女の祈り』『ミツバチのささやき』あたりの作品をなんとなく思い出した。この映画は光と影の使い方がとても上手い。光と影で空想(妄想)を表現したり、「うらめしや〜」的な表現*1だったり単純なのだけど基礎からしっかりしている。そして、終盤の雪のシーンで小橋を渡るところは、少女の恐怖心がこちら側にも伝わってくる名シーン。このシーンは音響の使い方も見事。そして、黒沢清に無くてはならないもの「カーテン」の存在。カーテンひらひらからの女出現。3本中じゃ一番好きだったかなー。間違いなく傑作。


恐怖の精神病院 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

恐怖の精神病院 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

『恐怖の精神病院』この時代病んでいたんだなーと感じた作品。精神病院の院長は「自分の居場所」の為に、事件を起こしてしまった。そして皮肉にも殺されても尚、「お前の望みはここにいることだろ?」と病院内に封印されてしまう。ストーリーも見事で、院長を非難した女性が精神病院に監禁されるんだけど、女性はめげずに反旗を翻し、院長を追いつめものすごいラストを迎えるのである。素晴らしい映画でした。

ここに書いた3本はどれも後の黒沢清になんらかの影響を与えているであろう要素が随所に見られた。黒沢清がジャケット裏で書いているようにストーリーテリングが見事。個人的には『キャット・ピープルの呪い』が一番グッときたかな。残りの3本も近いうちに見たいですね。どれも傑作なのでマジでオススメですよ。

*1:光を顔の下からあてるライティング