ちょっと頭おかしいけど抜群にかっこいい――『ズーム・イン暴行団地』(黒沢直輔,1980)感想

黒沢直輔『絶頂姉妹 堕ちる』(1982)がオールタイムベスト級によかったので、次いで見た『ズーム・イン暴行団地』(1980)だったのだけど、これがあまりにも気が狂った映画でびびる。夫が長期外出しているなかで、ピアノの調律使との不倫が始まるが、巷では連続放火魔による女を狙った殺人事件。しかも、女性器を発火させ殺すという気の狂いよう。いくらロマンポルノとはいえ、あまりのも突飛な発想で本当に頭おかしいんじゃないかな?と思いつつ、すごくかっこいい映画なのがロマンポルノのいいところだ。

2回目の絡みシーンで石が投げられ自転車ごと倒れるショットがすごくいい。そこから当然のように強姦される。後々効いてくるけど、このシーンだけ強姦されるときに目隠しされる。そこから『天使のはらわた 赤い淫画』(1981)ぶりに見たジャングルジム・プレイ。プレイというか、殺されているんだけど。非道な殺し方にここでもリミッター解除にビビる。『絶頂姉妹 堕ちる』でも思ったけど、黒沢直輔はロケ地の撮り方が素晴らしい。住んでいる団地と、まだ建築途中の団地とか、だだっ広い何もない平地とか、何度も繰り返して使うことで何気ないシーンにも反復効果が生まれる。

無茶苦茶な設定だけど、一応ミステリ仕立てになっている。なんとなくスラッシャーとか、ジャッロ的なジャンル・ムービーっぽさをロマンポルノにミックスしている。人が燃える映画といえばトビー・フーパ―の『スポンティニアス・コンバッション』(1990)だけど、それより10年前に「燃やすこと」に執念燃やす映画が出てきているとは…と思いながら、このメチャクチャかっこいいショットで悶絶。

基本的にかっこいいショットを撮れる監督なんですが、ちょっとこれはかっこよすぎる。画面外からリンゴが転がってきて、妊婦に渡す主人公。そして「ボウッ」と何かが燃える音に気づき振り返ると妊婦が燃えている!!妊婦燃やすとか、もう救いようのない映画なんですけどね、これあまりにもかっこよすぎちゃって悶絶ですよね。しかも、燃えながらもゾンビのように近づいてきてバタッと倒れる。これね、もう天才なのでは?と思うくらい。ちょっと言いすぎかもしれないけど、すごくかっこいい映画でした。ただ好みでいえば、全体的にショットが抜群によくて、さらに80年代の東京が余すことなく撮影された『絶頂姉妹 堕ちる』のほうが好きかな。まあ、どちらも傑作ですね。

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