手癖だらけ!これぞブライアン・デ・パルマ!!!!『パッション』※ネタバレあり


■あらすじ
自らの地位を広告会社の重役まで押し上げた、野心的な女性クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)。アシスタントのイザベル(ノオミ・ラパス)は、そんなクリスティーンを羨望(せんぼう)のまなざしで見つめていた。しかし、狡猾(こうかつ)なクリスティーンにアイデアを横取りされ、恋人にも裏切られてしまったイザベルは、クリスティーンへの殺意を抱くようになり……。(yahoo映画より)

■感想
前作『リダクテッド』から5年ぶりの復帰作。『パッション』はまさにデパルマ映画!!全力全開だった。念の為、先に言っておくとこの作品は、故アラン・コルノー監督『ラブクライム 偽りの愛に溺れて』のリメイク作品です。

『ラブクライム 偽りの愛に溺れて』については、『パッション』観賞後に「これデパルマ全開だったけど、原作どうなってるの?」なんて疑問を抱えていたのですぐさまレンタルして鑑賞してみました。ストーリーそのものは一緒なんだけど、『パッション』とはまるっきり違う映画だった。原作にはデパルマ映画のようなフェティシズムをあまり感じなく、良く出来たフランス産サスペンス映画というところで、確かに面白いがちょっと物足りない感がある。恐らくこちらの製作陣は、せいぜいリメイクしても大した改変されないだろうと思っていただろうが、そこはあのブライアン・デ・パルマである。ちょっとところか全然違う映画になっている!めちゃくちゃだ!そりゃ奥さんを映画で殺すくらいの人なんだから!

さてさて、まず物語の主軸となる登場人物クリスティーンとイザベルについて触れると、『ラブクライム』ではイザベルが金髪、クリスティーンが黒髪(若干茶まじり)なんですね。ですが、『パッション』だと逆転していて、クリスティーンが金髪と赤口紅でエロティックな変態で入れ替わっています。この”入れ替え”は『ボディ・ダブル』なんだろうか、いつまでたっても『めまい』に呪われている。
そして、二人はちょっとレズビアン的に撮っているあたりは『ファムファタール』でしょうか。最後には、イザベルの助手(原作だと男)が関係を迫るしな。金髪もやっぱり『ファムファタール』だろうし、人物だけで既に手癖だらけなんですね。
そして、イザベルが作る広告(CM?)は『リダクテッド』でPOVを扱ったようにお尻でPOVしてる!(これは凄い!なんて馬鹿だ!)

勿論、デパルマ十八番の長回しは健在だし、殺人事件のシーンではこれでもか!どうだ!と言わんばかりのスプリット・スクリーン。そして忘れてはならぬのが、ピノ・ドナッジオの音楽!!これは傑作としか言いようが無い!(馬鹿だ俺は!)クリスティーンが双子なのは『悪魔のシスター』か?ラストの怖過ぎる夢オチ的endは『殺しのドレス』かな?それにエレベーター・ナイフ・脚線美・ウォーキングだけを撮るシーン・転んでパンツ丸出しと、デパルマ以外がやれば只の変態映画として馬鹿にされるだけの馬鹿映画なんですが、73歳にもなってこんな映画を撮っているのかと思うと、本当にデパルマの人生なんだなと感傷的な気持ちになってきます。

また、原作から改変した度を超した表現として”駐車場”のシーンが印象的です。原作だと、ふらふら運転して壁にぶつかるだけなのに、スプリンクラーは発動するわ自販機はぶっ壊すわびしょぬれでわめくわでめちゃくちゃ(笑)あまりにも悲惨過ぎて笑えてくるのがデパルマの天才的手腕なんですが、ここで凄いのは、監視カメラによって覗いてる感じに見せるんですね。
そこから、病んだフリをするシーンでは、全てが何故か客観的なカメラワークになっていて斜めに構えられている。これはイザベルの嘘を映像処理で本物っぽく見せているのか。それともラストの夢オチ的endを考えると、フリをしているけど、実は本当に病んでたという風に表現しているのか。監視カメラや斜め撮り、客観的な視点と、”覗くものと覗かれるもの”はまさにデパルマ全開の表現だったなーと。この表現方法+技術はやっぱりものすごいものだなと感心しました。

原作がなんだか訳がわからないくらいのリメイクでしたが、まさにデパルマ映画だったし、最高!言うことなしです。ただ、デパルマなんて知らないよとか普段あまり映画観ないよって人には全然勧められないし、たとえ鑑賞しても「この馬鹿映画なに!?」って言われるんじゃないでしょうか。(褒め言葉だけどw

まあ、とにかくデパルマ愛してるって人は是非!劇場で。

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