ロブ・ゾンビがブラックメタル・バンドをプロデュースしたら?『ロード・オブ・セイラム』※ネタバレあり

■あらすじ
1692年、アメリカの地方にある街セイラム。「ロード・オブ・セイラム」と自らを呼ぶ7人の女性が魔女裁判で死刑を宣告され、執行間際に判事に呪いをかける。数百年後の現代、ラジオ局のDJハイジ(シェリ・ムーン・ゾンビ)のもとに、「ザ・ロード」と名乗る差出人から1枚のレコードが届く。判事の子孫にあたるハイジがレコードを再生したことで、魔女たちの呪いが解放されてしまい……。(yahoo映画より)

[感想]
この映画が盛大に大ヒットしていたら、ラウドパークロブ・ゾンビが09年ぶりに出場してくれたんじゃないかと、私的な感情が入り交じる中『ロード・オブ・セイラム』を観ました。今年のカルト・ミュージックがカーカスの『サージカル・スティール』であれば、今年のカルト・ムービーは『ロード・オブ・セイラム』だろう。

本作品には、ロブ・ゾンビが作った架空のブラックメタル・バンドのPVが流れるシーンがある。コープスペイントにローファイな音質、がなりボーカルにペタペタ走るドラム、ノイジーなカミソリギターとプリブラよりの音を出していて、さすがゾンビわかってるよ!ってそれだけで食いついてしまった。(ちなみにサントラも買ったね)
作品全体に響き渡る不協和音の連続に不安をかき立てられ、ロードというバンドの「ロードセイラム」という曲では弦楽器のようなものも使われ、音楽出身が作った映画ということをこれまでの彼の作品より強く感じられる。

ときより画面に映し出される山羊はまるで角の生えた悪魔のようにも感じられるし、ジャパニーズホラーオマージュっぽく不意にゾンビというか悪魔のような物体が現れる。主題は今年『パラノーマン ブライス・ホローの謎』でも扱われた「魔女裁判」なのだが、正直単なるおまけ要素にしか考えられないくらい、ロブ・ゾンビの趣味全開のブラックメタル映画だと感じられた。
プロットとしては『ローズマリーの赤ちゃん』のようにアパートの住人が悪魔崇拝者で、一人の女に赤ちゃん(悪魔)を産ませるなんてそのままちょうだいしている。月曜から始まり日曜で終わるというのは『天地創造』にかけているのだろうか?二回目の鑑賞時にじっくり出来事を追ってみたが、そんなに関係性は感じられなかった。深読みせずただ、世界の誕生の裏話に悪魔の誕生があるんだよって言う話だったのかもしれない。
フランシスが1時間で戻ると言って殺されるフラグを立てるのは、ホラー映画のお約束とも言うべき演出だったし、最後のよくわからない(ホーソーンの妄想?)世界でメリエスの『月世界旅行』の垂れ幕がホーソーンの後ろにかかってたのは印象的だった。

この点を考えてみると、過去のホラー映画をオマージュしながらも次世代のホラー映画を模索していたんじゃないかなんて考えられる。
不協和音にブラックメタル、悪魔の誕生、ホラー映画、コープスペイントとまさにブラックメタルと言っていい映画じゃないだろうか。正直わけわからない描写もたくさんあったし淡々とした映画だったけど、それが淡々とした展開の少ない真のブラックメタルを表現していている。恐らくロブ・ゾンビはこの映画でブラックメタルを意図していたが、先に書いた過去作への愛(オマージュ)がポスト・ブラックメタルで言うところのポスト・ロック要素みたいに化学反応を起こして、結果的にポスト・ブラックメタルみたいな映画になってる。
※関係ないことだけど、上映中はAltar of plaguesの『Teeth Glory and Injury』みたいな作品に感じられました。

最近観た『地獄でなぜ悪い』は異常なほど血が出るし殺しまくるけど、映画愛を画面いっぱいに表現していて、『キル・ビル』っぽいし万人にお勧め出来るエンターテイメントになっていた。しかしながら、『ロード・オブ・セイラム』こりゃあ正直人に勧めできない。ブラックメタルがフルボリュームでかかる事自体がNGなのに、あれだけラスト狂ってるとねえ。(ラスト付近は『ロッキー・ホラー・ショー』っぽいとも言われてますね)

個人的には最初の魔女が裸になって火に近づくシーンから悪魔(山羊)の顔アップ『ロード・オブ・セイラム』!!のタイトルコールで完璧やられちゃいましたね。

まさにカルト!と呼ばれる映画なんじゃないでしょうか。今年のベスト10入り間違い無し!

※ちなみにセイラムTシャツです。名古屋公開時には既に売り切れ…

Lords of Salem

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Teethed Glory & Injury

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Ecailles De Lune

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Venomous Rat Regeneration Vendor

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