デヴィッド・ロウリー『A Ghost Story』(2017)覚書

およそ90分の時間がここまでも愛おしく充実したものになるだろうか。面白い映画に出会うとそんなことを思う。デヴィッド・ロウリーの新作『A Ghost Story』はこれまで見た『セインツ―約束の果て―』(2013)や『ピートと秘密の友達』(2016)をはるかに飛び越えてくるような映画だった。まるで子供を驚かす遊びのように人にシーツをかぶせただけで幽霊になってしまう。幽霊は永遠ともいえる時間を体感し、次第に記憶なんてものはなくなってしまうのかもしれない。ただ“そこ”にいる理由というものはなんなのだろうか。『乙女の星』(1945)のように生きた人間がシーツをかぶって幽霊なんて、コメディに振るわけでもなく、ましてや幽霊と人間のロマンチックな恋愛模様を描くわけでもない。シーツの顔の部分には2つの穴が開いている。だからといってそこから眼球のようなものは見ることができない。シーツを被る者はケイシー・アフレックでも、スタッフでも誰でもいいのかもしれない。それは幽霊の物語だからだ。ルーニー・マーラが柱の間に隠したメモ。少女が岩の下に隠したメモ。そして最後にメモを広げた幽霊。たとえシーツの中身が実はケイシー・アフレックでなくても、幽霊は成仏したのではないだろうか。たとえば『君の名は。』(2016)で最後に出会った2人は、それぞれ本当に瀧と三葉だったのだろうか。目に見えない何かの力によって引き寄せられた彼/彼女らは、地球にぶつかる星のように、たまたま引力に引き寄せられてきただけなのかもしれない。それでも会わせたいと願った、わたしたちの想いというものは真実であり、たとえ時がたってもいつまでも記憶の奥底に残っていくのだろう。彼/彼女らのように。

Ghost Story /

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セインツ ―約束の果て―  Blu-ray

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