冨永昌敬『南瓜とマヨネーズ』覚書

泣き崩れる臼田がつかむ真っ赤なタオルを目撃した瞬間「はて?私はこの映画で“赤”を目撃したのだろうか?」と、思わずハッと走馬燈のようにそれまでの画面を思い浮かべようとする。(わずか数分前にオダギリが赤い半透明のビンからのど飴を目撃しているというのに!!)貴方たちは画面を見ていましたか?色彩を見ていましたか?運動を見ていましたか?と問いかける、あまりにも強烈な印象を残す赤いタオル。目撃した瞬間映画に敗北したのだと。どうしようもないこのフィクションに。

元バンドマンの彼氏を持つ臼田は「彼のため」といってライヴハウスの仕事が終わったら夜の店に行き、その店の客と愛人関係になってしまう。変態的趣味を持つその男は彼女に体操着を着せ、部活は何をやっていたか?と問いかける。水泳をやっていたと聞いてすぐにごそごそと鞄の中からスクール水着を取り出す男。等価交換によって手に入れた金を彼氏に見つかってしまう臼田。見つかった金は一度はごみ袋に捨てるが、また拾い上げてしまう。そしてその後、元カレのオダギリをライヴハウスで見つけるとすぐに後を追い一発ヤッてすっかりお熱をあげてしまう。臼田は過去に残してきた想いを捨て去ることができない人物だ。また、元バンドマンの彼はロクに仕事もせず、曲も作らず、元居たバンドの今の音楽性に文句をつけ口論になる。彼もまた過去に対しての想いがある。

逆に元カレのオダギリは過去に対して全く想いがない。二歩、三歩、歩いてしまえばすぐに忘却してしまう人物であり、目の前の人と「今」どうするか?だけを考える。臼田がコスプレキャバクラ(? 名称がよくわからない)でのショーツ姿から、→体操着→スクール水着→手にした金→男→赤いタオル(まるで赤ずきんちゃんのように羽織る=少女化?)と服や男を乗り換えていくように、着脱を反復させていく映画だ。そして最後には元のサヤに戻っていくようにさっぱりと映画は終えていく。最後にオダギリの原付がどこかに運ばれてしまうのが印象的。

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