2010年代の水樹奈々最高傑作!――水樹奈々『NEOGENE CREATION』感想

前作よりわずか1年1か月という超ハイペースでリリースされた、水樹奈々12枚目のフルアルバム『NEOGENE CREATION』。前作『SMASHING ANTEHMS』も1年半という短期間でのリリースとなったが今回はさらに短かった。昨年は夏ツアーをやらなかったので普段よりは時間があったのかもしれないが、東京ドームでの2DAYS、そして念願の甲子園球場での初ライヴということで、忙しくないわけがない。

前作『SMASHING ANTEHMS』は“今”の等身大・水樹奈々が反映された作品だったと思う。『Synchrogazer』以降のド派手デジタルサウンドに、エレガ上松氏作曲の壮大な世界観と、10th『SUPERNAL LIBERTY』がアルバム初収録曲ばかりだったことから一転して今の水樹奈々全力全開といった内容だった。

あらためて「水樹奈々」を再考する/水樹奈々『SMASHING ANTHEMS』を聴いた。 - つぶやきの延長線上

では今作『NEOGENE CREATION』はどうだったであろうか。11曲目『STARTING NOW!』以外はすべて新曲といった力の入れようだ。しかし『SMASHING ANTEHMS』ときのような新鮮さといったことはあまり感じられなかった。何を聴いてもどこか水樹奈々らしいフレーズやメロディがあふれている。通して聴いてみると、どこか懐かしいようなものも感じられ、とても暖かい気持ちにさせられた。そのうえ、15曲といった配分がそこまで長くもなく、身体に浸透していく。技巧に走ったりもしない。間違いなく、水樹奈々がこのアルバムに詰まっているといった感覚に満たされている。素直にいうけど、ここ数年での最高傑作になったと思う。サウンドバランスも素晴らしいし、シリアス/ポップのバランスもとれている。もはやアルバム制作に余裕すら感じられるくらいだ。

ここからは具体的に曲を取り上げながら綴っていく。1曲目『めぐり逢うすべてに』ロックバラードといったところで、アルバムのオープニングを飾るに相応しい曲だろう。声の伸びもよく、サウンド自体の広がりを感じる素晴らしい曲だと思う。今作でもベストに上げたいくらい好きな曲。2曲目は甲子園球場で初披露された『STAND UP!』。本作でいうとSTARTING NOW!と似たような明るくて元気な応援歌であり、ライヴでもとても盛り上がる。個人的には『You have a dream』系譜の新展開のような曲で、今後このような曲が定期的に発表されるのではないか?と勘ぐっている。
3曲目『Please Download』は初めてメインボーカルを加工している。デジタルダンスナンバーで、先日もダンス曲として披露されていた。4曲目『ALONE ARROWS』水樹奈々らしいシリアスロックナンバー。ボーカルが伸び伸びそして、生き生きとしており、このくらいのBPMが一番水樹奈々のパフォーマンス力が出せるのではないか?と思わなくもない。5曲目『TWIST&TIGERこれはとてもライヴ映えする曲だ。シンセや金管楽器が活躍するさわやかなロックナンバー。こちらもこのアルバムの中でベスト候補に挙がる。6曲目『Rock Ride Riot』は少し雰囲気が変わり、デジタルナンバーで奈々さんの歌い方が面白い。これまでになかったような新鮮味がある。
そして7曲目はちょっと気恥ずかしいくらい恋を描いた『はつ恋』。『悦楽のカメリア』や『ヒメムラサキ』あたりの「和」を感じさせる曲で、久々に聴いたタイプ。ライヴ序盤〜中盤あたりで活躍しそうな曲だと思った。8曲目『JEWEL』は定番バラードソング。アルバムの小休憩としていい位置にある。水樹奈々らしいなと思う、故郷(両親)への想いを表現した曲だ。そして9曲目『UNLIMITED BEAT』はガラッと雰囲気を変えてライヴでいうと「ガンガン行くぞ!!!!!お前ら行けるのかあ!!!」と奈々さんの声が聞こえてくるようである。いわゆるシンセガンガンでツーバスドコドコ水樹奈々らしい定番ソング。10曲目『WAKE UP THE SOULS』もまた爽やかなロックナンバー。そしてこれまた応援歌STARTING NOW!明るくてライヴの定番になる曲だろうと思う。
そして12曲目『GLORIA』この辺は「なのは系」から派生された曲じゃないだろうか。力強く勢いがあって広々と壮大な曲調。これもまたライヴ向き。13曲目『RODEO COWGIRL』いわばタオル曲といった感じ。サビの「AyAyAyAy…」部分がとっても好き。そしてシリアスな『君よ叫べ』。イメージがダブるのは『VIRGIN CODE』だろうか。特にサビ前あたり。これまた緊張感があってライヴ後半に活躍しそう。そしてラストを飾るのが奈々さんが惚れこんだという『絶対的幸福論』なんだこのタイトルは!?といったところだろうか。これまたどストレートな愛についての曲。ここまでストレートに書かれると恥ずかしいとかいう次元を超えてくる。今年には声優として20年・歌手デビュー17年という、ベテランになるわけだが、これはまさに“今”水樹奈々が歌うことに意義がある歌じゃないだろうか。

水樹奈々にとって2010年代というのは声優として初めての東京ドームでのソロライヴ。あこがれた美空ひばりと同じ舞台に立ってスタートした10年代。「なのは系」のすべてを凝縮して極限までに派手・勢いを求めた8th『IMPACT EXCITER』。水樹奈々の中でもロック色の強い、そして『なのは』から『シンフォギア』へとバトンタッチを果たした9th『ROCKBOUND NEIGHBORS』。そしてトコトン新しいことに挑戦した10th『SUPERNAL LIBERTY』。等身大の水樹奈々を表現した『SMASHING ANTHEMS』。そして地質学で「新第三記」といった意味をする「NEOGENE」をタイトルにもってきた『NEOGENE CREATION』。これからもトコトンと突っ走る宣言だろうし、今後の新展開がとても楽しみなアルバムとなった。私的には10年代でいちばんの傑作アルバムになったのではないかと感じた。

■トラックリスト

  1. めぐり逢うすべてに
  2. STAND UP!
  3. Please Download
  4. ALONE ARROWS
  5. TWIST&TIGER
  6. Rock Ride Riot
  7. はつ恋
  8. JEWEL
  9. UNLIMITED BEAT
  10. WAKE UP THE SOULS
  11. STARTING NOW!
  12. GLORIA
  13. RODEO COWGIRL
  14. 君よ叫べ
  15. 絶対的幸福論

■特典

  1. 絶対的幸福論 (MUSIC CLIP)
  2. 「NEOGENE CREATION」 MAKING MOVIE
  3. TEAM MIZUKI 富士山頂への道
  4. NHK水樹奈々 in 新居浜 のど自慢延長戦」ダイジェスト

NEOGENE CREATION(初回限定盤)(Blu-ray Disc付)

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