あらためて「水樹奈々」を再考する/水樹奈々『SMASHING ANTHEMS』を聴いた。

2015年11月11日に発売された水樹奈々の11枚目オリジナル・アルバムSMASHING ANTHEMSについてのアレコレ。*1

今年の名古屋公演で11枚目のアルバムを発表したときには「えっ?!3ヶ月切っているけど、そんなペースで発売できるの?」って、正直びっくりしたし無謀にも思えた。しかも前作『SUPERNAL LIBERTY』を発売してから、まだ1年7ヶ月という超ハイペースである。それに昨年アルバムリリース後には『禁断のレジスタンス』『エデン』『Angel Blossom』『Exterminate』4枚もシングルをリリースするなど、まさにリリースラッシュ。その間には夏ツアーもあれば声優の仕事もある。忙しいなんてもんじゃないのだ…。一体いつ寝ているんだろう…と思うくらいなのだが(実際睡眠時間は少ない様)。

水樹奈々「SMASHING ANTHEMS」インタビュー - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

そんな過密スケジュールのなか発売された『SMASHING ANTHEMS』。奈々さん本人も語っているが、発売延期も考えなければならないくらいだったらしい(やっぱり感)。タイトなスケジュールで作られたアルバムですが、正直あまり期待してなかったんですよね。というのも、今作はシングルカットが15曲中5曲と、アルバム意識がそこまで高くないのかな?と思っていたから。それに対して前作『SUPERNAL LIBERTY』は、構想から1年以上かけて作り込まれていたし、15曲中2曲しかシングル曲がなかった。楽曲もお得意のシンフォニックロックからヘヴィメタル、ファンク、カバーソング(『笑顔の行方』)…と、ありとあらゆる音楽の色を奈々さん風にアルバムに詰め込んでいた。だから、そんな集大成的なアルバムの後にこの短期間で作れてしまうのか!!と、おっかなびっくりな気持ちが先行していたのである。

さてさて、長すぎる前段は終わりとして『SMASHING ANTHEMS』どうだったかというと、前作の様に衝撃的な傑作ではないけど「いいアルバム作ったな〜」としみじみ感じたのだ。ファン的には新曲中心にして欲しい本心はあるのだけど、今作シングルを入れるポイントが絶妙に上手い。シングルの強さ(認知的な)に呑まれることなく、その他の曲に相乗効果を与えている様な、そんな作りになっている。各シングル曲とアルバム曲のサウンドバランスも心地よく、シングル曲が入りながらも全くノイズを感じることなく「アルバムを聴いているな」という時間を感じられた。このような作りになったのも、忙しいスケジュールをこなしながら時間を見つけアルバム作りをしていたからじゃないかなと思う。全ての曲が数回聴いただけで身体に馴染んでくる。一貫した音作り。楽曲の配置といい、アルバムが水樹奈々というアーティストをリアルに表現しているように感じられたのだ。

具体的に収録曲に触れながら考えていくと、まず一曲目にアニメ・シンフォギアGXのクライマックスでもかかった『Glorious Break』。アニメでも重要な位置付けとなった奈々ソンだが、「まさに水樹奈々!」を感じさせる壮大なオープニングに『アヴァロンの王冠』を感じさせるが、さすがシンフォギアの曲。シンフォニックな音作りにシンフォギアっぽいデジタルなビートが主軸となっている。そして、曲をすっ飛ばすが最終曲がシングルにもなった『Exterminate』である。おそらくアルバムレコーディング中にシンフォギアGXのアフレコが行われていたのじゃないだろうか。3期まで続いているシンフォギアGXが彼女の中で2010年以降の代表作となった。彼女の声優としての活動と歌手活動とが密接に絡み合っているように思えた。普段あまり「リアル」という言葉を使わないようにしているのだけど、今回ばかりはこの感覚が付きまとう。これが前段で書いた「アルバムが水樹奈々というアーティストをリアルに表現している」感覚なのだと思う。

アニメと共に成長する歌姫/水樹奈々『Exterminate』を聴いた。 - つぶやきの延長線上

前回『Exterminate』の記事で書いた副題「アニメと共に成長する歌姫」が、今回はシングル曲だけでなくアルバム作りに反映されたんじゃないだろうか?と思うのである。確かに彼女は歌手になるために小さい頃から歌い上京した。そして自分が好きだったアニメがクロスオーヴァーすることによって、今のスタイルが生まれた。これだけ売れてくれば音楽番組以外やインタビュー以外の仕事も増えてくる可能性があるのだが、やはり彼女がよくいう「声の仕事」がスタンダートなのだろう。それ以外の仕事は基本的にしていない。この『SMASHING ANTHEMS』を聴きながら、彼女の仕事たち*2が相乗効果を与えて水樹奈々というアーティストを構築しているんだなと、改めて実感した。音楽理論や楽曲の素晴らしいさを伝えるボキャブラリーもないので、各曲についてはあまり触れませんが、『SMASHING ANTHEMS』は素晴らしいアルバムでした。これからも精力的に活躍されるのを陰ながら応援していきます。

◼トラックリスト
01 Glorious Break
02 Never Let Go
03 SUPER☆MAN
04 Angel Blossom
05 BRACELET
06 レイジーシンドローム
07 コイウタ
08 禁断のレジスタンス -Extended Mix-
09 The NEW STAR
10 Clutch!!
11 熱情のマリア
12 エゴアイディール
13 エデン
14 アンビバレンス
15 Exterminate

・お気に入り奈々ソン
『Glorious Break』シンフォギアソングの集大成だろう。『アヴァロンの王冠』のオープニングに「なのは系」の激しさ、シンフォギアの方法論をぶち込んだライヴで盛り上がるだろう攻め曲。
『Clutch!!』絶対タオル曲(笑) インタビューでタオル曲にしたいって言ってるし。とにかく明るくてノリのいい定番ソングになるかと!

(特典)
1. アノネ~まみむめ☆もがちょ~ [LIVE ATTRACTION 2002 at 東京国際フォーラム ホールC] (未公開ライブ映像集)
2. LOVE&HISTORY [LIVE ATTRACTION 2002 at 東京国際フォーラム ホールC] (未公開ライブ映像集)
3. テルミドール [LIVE SENSATION 2003 at 渋谷公会堂] (未公開ライブ映像集)
4. PROTECTION [LIVE SENSATION 2003 at 渋谷公会堂] (未公開ライブ映像集)
5. NANA色のように [LIVE SPARK 2004 -summer- at Zepp Tokyo] (未公開ライブ映像集)
6. BE READY! [LIVE SPARK 2004 -summer- at Zepp Tokyo] (未公開ライブ映像集)
7. そよ風に吹かれて... [LIVE ROCKET 2005~summer~ atパシフィコ横浜国立大ホール] (未公開ライブ映像集)
8. 「好き!」 [LIVE ROCKET 2005~summer~ atパシフィコ横浜国立大ホール] (未公開ライブ映像集)
9. オーディオコメンタリー
10. 「SMASHING ANTHEMS」PHOTO SHOOTING

*1:1が7つ並ぶ奈々(7)な日に発売

*2:歌、アニメ、ラジオ等