パンツァーフォー!ゴトゴト煮詰めた作家性『ガールズ&パンツァー 劇場版』ちょー雑感

『ワイスピ』『マッドマックス』そしてスピルバーグの『1941』だ!とTLが賑やかになっていたので、ガルパン劇場版』見てきました。いやね、正直テレビ版はそんなに好きじゃなかったんですよ。気に入らない理由も特になかったんだけど、琴線に触れなかったというかね。なので公開1週目は無理していかなかったのですが、これがちょー面白かったんだ。

事前の触れ込みで『1941』っぽいと聞いていたので、ずっとドンパチかましているのかな〜と思いきや、案外しっかり演出やっていて戦場でもドラマでも「彼女たちが集まったりバラバラになったりすること」が重要なキーになっていた。例えば、オープニングの親善試合から学校廃校の流れで、彼女たちは学校を失い各自転校する学校が決まるまでバスで散り散りになってしまう。生徒会長は気づけばいなくなり、風紀委員は風紀を乱す方に回ってしまったり、転校のサインをもらうため一旦帰省してしまったり彼女たちはバラバラになる。なんとか学校再建にこぎつけたと思えば、大学選抜との過酷な戦い。明らかに負け試合の中、これまで彼女たちと死闘(?)を繰り広げた高校が一斉に集結する。一旦離れて行ってしまったものが、また一つに集まること。ドラマ以外の戦地でも、「丘を占領する→600?砲に爆撃される→ばらける」だったり、「逃げ回る→囲まれる→(アクション)→逃げる」と集合したりバラけたりドラマと戦場で演出が二重性を帯びる。とても、うまい演出だと思う。

そして完全に『1941』オマージュな観覧車(笑)だったり、戦車が跳ねたり飛んだり「ワイスピかよ!」とツッコミを入れたくなったり、テレビ版でそこまで目立っていなかったアクションの部分が映画化によって、水島努のやりたいように(笑)。こんな映画で泣かないだろう〜と思いながらも、カチューシャと仲間たちのやりとりには涙させられた。実力としても今年のアニメ映画ベストクラスだと思う。

「女子高生が戦車に乗って実弾で戦う」となんとも嘘八百な設定ながら、ファンを獲得してきたのは虚構のバランス感覚が素晴らしかったからじゃないだろうか。例えばオープニングで紅茶を飲むのほほんとしたシーンながら、切り替われば外では実弾が撃ち込まれている。実弾を使いながらも戦車は特殊なシールドで覆われているとか適当な噓(笑)をついていながらも、みほはずっと戦車から身体を出していたりね。今年ヒットした水島監督の『SHIROBAKO』も、虚構性をうまく扱った作品だった。また「スポ根」というキーワードで考えると、次の相手が大学というのは高校生ならではの絶妙な感覚だね。中学くらいなら大学生って絶対的な強さなんだけど、高校生くらいだと知識や経験が増えるので「もしかしたら勝てるのでは?」という感覚も少しある。虚構性もそうだけど、リアルな感覚もいい塩梅になっているなーと思った。

テレビ版ではあまり興奮しなかったんだけど、120分にまとめることで作家性のようなものを煮詰められたんじゃないかな。いや〜本当に面白かったです。二回目行こうかなー!パンツァーフォー!