この瞬間を閉じ込めてしまいたい『響け!ユーフォニアム2』第一回「まなつのファンファーレ」覚書

競合ぞろいの秋アニメの中でも待ち望まれていただろう『響け!ユーフォニアム2』。1話から1期との違いを明確に示してきた1話だった。久美子の中学時代の回想が印象的な1期。彼女が意識せずに漏らしてしまった言葉によって麗奈との物語がスタートした。意識の変化が1期の目指したところだったろうか。久美子が回を重ねて「吹くこと」が上達していき、意識して言葉を発することができるようになる。ほかの部員たちも「全国なんて冗談でしょう」的な反応を示していたが次第に「私たち本当に全国に行けるかも?」と思えるように変化する。ゼロからスタートしてコツコツと建築して一つの完成品になった1期の物語だったが、2期はスタートラインが違う。

響け!ユーフォニアム2』は京都府大会が終わり、夏休みが始まり関西大会を目指すところからスタートする。1期とは違い、彼女らにはすでにお互いを信頼し合い一生懸命練習をするのみであった。だがしかし、ドラマというものは残酷である。その構築された信頼関係に歪みが出るような仕掛けづくりが1期からなされていたのだ。おそらく2期のドラマでメインになってくるのは田中あすかと二年生たち。今の二年生が一年生のときにどっさりと部活をやめていったといった話が1期からあった。1期では明確には触れられずに、確信犯的に仕掛けられた時限爆弾が音を立て崩壊へ導いていく。

新たに登場した二年生の鎧塚みぞれは階段付近で苦しんでいる。「この音聞きたくない」と逃げるように階段を下りていく。そして久美子はその音の正体に気づく。そこにいたのは毎日あすか先輩に入部の許可を貰いに来ていた傘木希美。久美子はいう。「好きなんですね、フルート。」彼女は少し違和感を覚えながらも「好き。大好きだよ。」と返す。誰かにとっては聴きたくない音。でもまた誰かにとってはいいと思える音。一年生たちが先輩たちの態度に困惑すること。立場が違えばこれほどまでに反応が違うのか、と思わせる。1期から同様にレンズを意識させるような被写界深度やピント送りなど、見せる/見せないの選択をしているように、物語もまた一年生に明かされていない。オーボエとフルートと同じ木管楽器ながら相いれないドラマが待ち受けているようだ。

画面作りはすごくリッチだったと思う。京アニといえば『聲の形』が絶賛公開中で『君の名は。』との相乗効果かヒットを飛ばしていますが、たとえば『聲の形』で初めて京アニ(またはアニメ)に触れて『響け!』を見たとしても、テレビアニメでこんなに綺麗な映像作れるんだ―と素直に感心するんじゃないだろうか。それくらいリッチに作りこまれている。作りこまれすぎていて余白が足りないんじゃないだろうか、と同時に思う瞬間もある。ただ、1時間スペシャルの1話を飾る相応しい回だったとは思うので。多分狙っているのだろうけど、冒頭のほうが画面が白っぽい。レンズのボケ効果もあると思うが。1期→2期への移行に際し「記憶」を埋めるこうかというか、回想ではないけど時間を感じさせるような演出に思えた。

またまた『聲の形』繋がりだとお祭りの花火。『聲の形』と似たような(自社だし時期も近いので当たり前か)処理をされているのだろう。これもまたリッチで綺麗だった。祭で塚本が不意に現れるシーン。不意にって表現をダッチアングルで予期させているのがなかなかいい。そしてこの後、久美子と麗奈の秘密の時間。

「この時間は永遠ではない。大好きな友達ともいつか離れ離れになって、どんなに願ってもすべては瞬く間に過去の物になっていく。今というこの瞬間を容器に詰め込んで冷凍保存できればいいのに。そうすれば怖がることなんて何もないのに」

この台詞を聞くと塚本と滝センセイ殺せばこのまま二人は永遠に閉じ込めておけるんじゃないだろうかと思うなどと…。その瞬間のモノである花火を見せながら、瞬間は永続的にはならないこと。青春は今しかないことを物語っている素晴らしい演出だった。何より手をニギニギぎゅっ!(顔を赤らめ)ってもうやってらんねえよ!

と、最後に取り乱しましたが面白い1話だったと思います。2話以降も楽しみですね。