光のイメージ、時間の生成 『響け!ユーフォニアム2』第五回「きせきのハーモニー」感想

『響け!2』これまではあまりハッとすることがなかったんですが、5話本当に素晴らしい回でした。絵コンテ:三好一郎(木上益治)、石原立也京アニ経営陣による2人コンテ体制が功を奏したと言っていい感じだろうか。また演出は三好一郎(木上益治)。光と時間の感覚が研ぎ澄まされていた。まさに「響け!」といったタイトルにふさわしいエピソードだったと思う。今回、特に素晴らしかったBパート演奏シーンについてのあれこれ。

彼女たちの全国に対する想いはとても強い。久美子が入学したころは彼女が「下手」とわかるほどのレベルだった。しかし、雄弁に全国への気持ちを語る田中あすかや久美子、麗奈たちの発言を聞いていると、現在は全国が希望の存在としていることがわかる。5話ではその想い(希望)が光として表象される。レギュラーメンバーが演奏しているなか、サポートメンバーたちがギュッと両手を握り願いを込めているように見える。舞台の隙間からこぼれる光をローアングルからカメラを引き上げる(縦PAN)することで、まるで教会で祈りを捧げているように。

演奏しているレギュラーが内側(舞台)のイメージを、サポートメンバーが外のイメージを生成する。こういった内と外といったイメージを丁寧に蓄積しなければ響かない。またその内と外といったイメージは舞台上で瀧先生が指揮をふる瞬間、会場外の風景をカットによって積み重ねている。外の世界が存在しているから、彼女たちの内側から音が画面を伝わり外へ響いていく。また、彼女たちの譜面を見るとわかるが、その外への“響”は記憶とも密接に絡み合う。

彼女たちの譜面に記された落書きや写真。夏休み一生懸命に練習してきた“記憶”、光り輝く一瞬が確かに記録されている。本番中の汗や被写界深度が浅い、白飛びしそうな画面に反映されている。また、久美子にクローズアップし、瞳に乱反射するレンズフレアのような円状の光は、空気中の塵などがスポットライトの光によって反射している様子といったことだろうか。そして麗奈のソロが始まると久美子の記憶が再生される。あの時2人で見た花火の光景。そして2人で山を登ったときのこと。

「この時間は永遠ではない。大好きな友達ともいつか離れ離れになって、どんなに願ってもすべては瞬く間に過去の物になっていく。今というこの瞬間を容器に詰め込んで冷凍保存できればいいのに。そうすれば怖がることなんて何もないのに」

1話で印象的なこの言葉を思い出す。彼女が今の場所にいることは永遠ではない。でも、その瞬間を閉じ込めておきたい。

彼女たちのいる舞台以外は暗いということからも、舞台が光(≒希望)の場所として効果的に扱われているのがわかる。こういった光の意識によって、手に汗握る演奏シーンや、それ時間以外の“待つこと”でのサスペンスフルな時間の獲得。一曲まるごと演奏する意義よりも、途中に混入される光イメージ(写真や久美子の記憶の再生)により、複数の空間を作り出すことで「時間」を生成している。

最後に久美子が「コンクールはまだ嫌いですか?」と聞き、みぞれが「たった今、好きになった」と告白するように、“響くこと”にスポットを当てたエピソードだった。うん、これがハーモニーだよね。素晴らしかったと思います。妙に前向きで明るく振舞ったあすか先輩の動向も気になるが、今後も楽しみですね。


この瞬間を閉じ込めてしまいたい『響け!ユーフォニアム2』第一回「まなつのファンファーレ」覚書 - つぶやきの延長線上