国産ブラックメタル・バンドの大傑作/COHOL『裏現』を聴いた。

2013年の激情ハードコアheaven in her armsとのスプリット『刻光』が、まだ記憶に新しい国産ブラックメタルバンド”COHOL”の2ndアルバム『裏現』が発表された。COHOLはブラックメタルバンドながらも、ハードコアのバンドとジャンルの垣根を越え精力的な交流をしており、つい先日もkamomekamomeと共演している。また、8月にはブルータルオーケストラVampilliaと「いいにおいのするCOHOL裏現リリースTOUR2015」を実施予定。もちろん、ジャンルを越えた交流だけでなく、2013年にはオーストラリアの暗黒デスメタルバンド”PORTAL”のJAPAN TOURのサポートに入るなど、その実力の高さを十分に見せつけている。

さて、今回フランスのデスメタルブラックメタルのレーベルOsmose Productionsと契約し、ワールドデビュー作となった2ndアルバム『裏現』だが、これが大傑作だ。本ブログではあまり音源の感想を書かないのだが、このアルバムを聴いたとき、「ブログに感想を書かなければならない!」と変な義務感が生まれた。それほどまでに『裏現』の出来がいいのだ。

そもそも、COHOLはジャンルの垣根を越えたライヴ活動及び、彼らのそれまでの音源自身もハードコアっぽさが少なからず感じられて、ブラックメタルファン以外からの評価が高く、ハードコアの流れからCOHOLには入っていく人も多かったと思う。しかし、今回の『裏現』だが、ハードコアの流れを感じられた前作に比べて、ブラックメタル成分が大いに増しているように感じられた。まず、ブラックメタルを感じられる曲ごとに掘り下げていこう。

#1「冷たい石」森で撮影されたジャケットが印象的なように、曲自身も冬の薄暗い森林のなかで、これから始まる幻想へ誘ってくれるようなギターの旋律から、#2「下部構造」イントロの爆心力のあるノイジーなギターへ雪崩れこんでいく。コールドブラックを感じさせるトレモロリフと日本語の歌詞が絶妙にマッチしている。それと、#7「病の元型」のスケールの大きい曲の存在。過去に比べ、サウンドがクリアになったこと、ブラストビートに爆心力が備わったことにより、キーボードレスであるがEMPERORのような壮麗さ、荘厳さ、を獲得しているように感じられた。これまでのハードコアっぽさ以上に、ストレートなブラックメタルをやっている印象が強い。

また、ブラックメタル的アプローチだけではなく、例えば#3「暗君」は3分も満たない短い曲であるが、時間に合わせたようにスラッシーなリフで牽引するような曲もあるし、『裏現』発売前に先行で披露されていた#4「地に堕ちる」は、#1「冷たい石」で感じさせた、静寂な森林のイメージから重厚なヘヴィリフ〜爆心力のあるドラミングといったライヴ向きの曲である。(絶対盛り上がりそうだ)

#4「地に堕ちる」soundcloudCOHOL - Depressive by Osmose Productions | Free Listening on SoundCloud

全体的に言えばブラックメタルの雰囲気が強いが、上記のような特異点もあり、heaven in her armsとのスプリット『刻光』の流れを継承し、見事にブラックメタルに昇華させている。そして、その頂点がアルバムのラストを飾る#8「急性期の終わり」だろう。#7のようなスケールの大きい曲かと思えば、驚異的なギター、ノイジーなベース、爆裂するドラムが三位一体となり、暗黒空間を創造する。そして、奇妙なのが、綺麗な旋律で幕を閉じると思いきや、ラストはノイズで締めること。これがCOHOLのハードコア・ブラックメタルクロスオーヴァーが由縁とされる魅力のひとつだと思う。
それと、発売と同時に発表されたHMVのインタビューで(COHOL インタビュー!|HMV&BOOKS onlineニュース)今回の歌詞は従来よりも外向きに(観客を意識して)作られたと語っている。このインタビュー記事は曲作りの際のメンバーの心境を聞き出していて、とても面白いのでぜひ読んでみましょう。

ブラックメタルは大作になりがちで、長くなってしまい疲れるといったことがよくあるのだが、COHOLの『裏現』は40分程度。情報量は多いが、サウンドも過去作に比べてクリアになっているし、非常に聴きやすい作品に仕上がっている。短い通勤・通学時間でも安心して楽しめる←重要

あまり音源ネタは書かないのだけど、こればっかりは書かずにはいられないと勢いで書いてみた。音楽理論も楽器を扱えるわけでもないので、作品の良さをなかなか伝えきれなく悔しいのですが、2015年の新譜でもベストクラスの作品だと思う。
昨年、ウェスアンダーソンの『グランド・ブダペスト・ホテル』を見た際に、「ウェスアンダーソン高みにいったな…」と感じたのだけど、COHOLの『裏現』も「ああ、すげえ、高みいっちまったよ」と、ただ讃えることしかできない。ということで最後にくどいようですが、COHOL『裏現』大傑作です。ブラックメタルファンはぜひ。

◼トラックリスト (日本語タイトルー英語タイトル)
1.冷たい石 - Frozen
2.下部構造 - Infrastructure
3.暗君 - Chaos Ruler
4.地に堕ちる - Depressive
5.葬送行進 - Funeral March
6.絶えぬ火 - Endless Ember
7.病の元型 - Arche Pathogen
8.急性期の終わり - The End of Acute Phase

◼お気に入り曲
#3『暗君』:スラッシーなリフが気持ち良い。
#4『地に堕ちる』:ライヴで盛り上がりそう。
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COHOL web store
↑オフィシャル・ウェブストアも立ちあげている。過去作も買えるようです。まあ密林も貼っときます。余談:1stは密林でアホみたいな値段付いているのでオフィか別のところで探しましょう。

裏現 (りげん)

裏現 (りげん)