「後悔先に立たず」と思う前に…『オルカ』を見た。

「自分がされて嫌なことを相手にしてはいけない」と、生まれてこのかた何回も聞いたような言葉ですが、たまに「あんなことを言わなければよかったー」なんて、よくあることで人間なら何回かミスするんですよね。ただ、絶対にミスってはいけないことも存在するよってのが、『オルカ』で描かれています。

『オルカ』は動物(シャチ)による人間への復讐劇をストイックに描いています。ストーリーは至ってシンプルで、シャチを捕まえて金儲けを考えた漁師が誤って母親シャチを捕獲してしまい、あらぬ事かおなかにいた赤ちゃん含めぶっ殺してしまう。そして、それにブちぎれた父親シャチが復讐するという話。

主人公の漁師は、過去に車の事故で妻と子を殺されており、シャチと同じ境遇にいた人物なのに、シャチの家族をバラバラにしてしまうという最大のミスを犯してしまう。漁師がその事で苦悩するというカットが混入され、自分のトラウマと戦うドラマのように見せておきながら、最後には「ははは、そんな反省受け入れるか!」と見事に漁師をぶち殺すシーンに至ります。この映画の主題・到達点は「復讐」するその瞬間であり、演出含め全てそこに行き着くように仕組まれている。

この映画では、まず始めに海洋学者?(ちょっと忘れました)がシャチの生態を調べているシーンから始まり、言う事を聞かない漁師と絡む。時よりナレーションで海洋学者が「漁師と一緒に行動してみた〜」的な台詞が混入される。このナレーションは、彼女の過ぎ去った記憶の一部であり、なによりも「死」を匂わせる機能として果たしているように感じられた。そして、そう言った「死」とは正反対のシャチの「生」の原動力は、ときより美しいシャチの行動(泳ぐ/飛ぶ)で表現される。復讐劇でいうと『人魚伝説』もそうだけど、海を泳ぐ、地上からの「光」という画がとてつもなく美しい。「死」の香りというのは、反対の「生」の香りがなければ成立しないのではないのかもしれない。

それと面白いのが、あくまでも「復讐劇」であるのでパニック映画、例えば海の生き物繋がりで『ジョーズ』あたりのパニック系とは違う。確かに、船がシャチによって沈没させられたり、家を壊され足をもぎ取られる。水中からいきなり飛んでくるって動きは、パニック映画のそれかもしれないが、『ジョーズ』のように理由の無い殺しではない。あくまでも語りたいのは「家族を殺したお前を殺す!」という強い意志であり、やはりラストの氷の上での大戦がこの映画の最大の見せ場であり、殺した瞬間がこの映画の「到達点」だと考える。


つらつら色々と書いたが、絶対にミスってはいけない瞬間というのは誰しも一回は経験する事だろうと思う。まあ、会社で「どんな失敗しようが、殺されることはないんだから〜」なんて台詞はよく飛び交うが、殺される失敗も世の中には存在すると、この映画はとてつもない怒りを原動力として脳裏に焼き付けるのである。とても面白かったです。

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