『海と大陸』を観ました。※ネタバレあり

[あらすじ]
20歳のフィリッポ(フィリッポ・プッチーロ)は、シチリア島よりさらに南の小さなリノーサ島で生まれ育った。父が2年前に他界したため、彼は70歳になる祖父(ミンモ・クティッキオ)と一緒に漁師として海に出ていた。先細りの漁業から早々に観光業にくら替えした叔父のニーノ(ジュゼッペ・フィオレッロ)は船を廃船にするよう勧めるが……。(yahoo映画より)

[感想]
小さな島で漁師を営む老人と少年が、難民との接触で苦悩しながら夏の観光客と一緒に生活する…
僕は日本で暮らしているので、なかなか難民と聞いてもパッと日常風景を浮かべることが出来ませんが、昨年のアキ・カウリスマキ監督の『ル・アーヴルの靴みがき』で難民問題を扱っていたので、他の監督はどういう風に表現するのか気になり、ふらっと映画館を立ち寄ってみました。

あらすじを聞くと、のっぺりした映画なんじゃないかと思いがちですが、それが思ったよりテンポがよくって、はっとするシーンもこまめに入れたり、不安を煽るような音楽の使い方も凄く上手で意外と技巧映画でした。
難民を助けるのか、助けないのか、島としては、人としてはという、答えの無い問題について語るシーンも見事でしたし、難民がフィリッポの運転する船に掴み乗り込もうとするシーンもハラハラしたしとても面白かったです。十分エンターテイメントとしての映画になりきっていたと思いました。ただ、難民問題にスポットを当てるとしたら少し脚本が弱い気がしました。

フィリッポのおじいさんが助けたおかげで、警察に船を奪われるという事件が起きましたが、ここではっきりと、「昔から黒を見つけたら引き返せ」(台詞があっているかはさだかではないですが)と言っています。
しかしながら、夏には観光客が来るという設定であれば、観光客が難民問題について事前知識をもっていても不思議ではないはず。後に浜辺に難民たちが打ち上げられ、観光船でたくさんの観光客が帰ってしまうシーンがあります。もともとすぐ帰る予定であったとしても、難民が直接的な原因に見えますし、都会の女の子も帰ってしまいます。(前日の事件が原因かと思いますが…)あまりにも観光客がこの問題について疎過ぎるんではないかと、僕は感じてしまいました。
僕は年1回旅行をすれば良い方なので、そこまで旅行に対して語れませんが、自分が行く地域のことは事前に情報を入れておくし、過剰とも言えるくらい気をつけて行動する方なので、ちょっと納得いかないストーリーだった。

それ以外の演出・演技・音楽はパーフェクトだったし、もう少し(無い物ねだりでしょうか)自分のなかでの高評価に届かなかったです。