心霊ビデオ傑作選No.001 『Not Found外伝 いま、霊に会いにゆきます』(2014)――フェイクドキュメンタリーの真偽性を活用した傑作

初回から変わり種を出すのも反則技かと思ったが、『コワすぎ』以降の心霊ビデオユーザーにはキャラ立ちやネタ化しやすい作品のほうが受け入れやすいのではないか、と従来の心霊ビデオのジャンルから逸脱した『Not Found外伝 いま、霊に会いにゆきます』について書くことにした。『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズに代表される心霊ビデオは、視聴者からの投稿映像をもとに紹介して、実際に心霊ビデオが撮られた場所にいって調査をしていく…といった手順をたどる作品だった。しかし、本作はまず投稿された映像というものが存在せずに、制作者であるディレクターたちが「あと2週間で作品を発表しなければならない」ネタがないことに彼らが苦悩するところからスタートする。制作の裏側が舞台となり、その過程を記録していこうといった試みである。もちろんこれはフェイクなので、白石晃士がいうところのフェイク・ドキュメンタリーに当てはまる。『コワすぎ』のように主人公になってしまうのも、わりとポピュラーなものになってきているが、本作では募集した投稿ネタが誰がみても「ウソ」に見えることが重要だ。

ある日「自分は霊だ」と語る人物から制作へネタが提供され、彼に会ってみようといった流れに。そこには身体が貧弱そうでマスクをしたいかにもうさん臭い人物が待っている。制作側も「わりと普通じゃね?」なんていいながら、投稿者のいう「自分は霊だ」というネタは信じた様子は見せずに、自称・霊の家までいき、締め切りも迫っているのでとりあえずコイツでヤラセ映像作ろう…となる。映像を作ってみようとすると、あまりにも自称・霊がどんくさいのでディレクターが自称・霊に怒る始末。明らかにそのシュールな映像からは、彼もかわいそうだな〜と思うくらいに説教し、気分を返してしまい関係性が悪くなる。そこから、仲直りしようとサシで飲みに行くことに。すっかり意気投合して名前で呼び合ったり、いいものができたと解散するが…

ここから事態は一変。先日の映像を見てみるとマスターからノイズが発生しており、もう一度撮ることを持ち掛けるが、ギャラでもめたり、またもや彼と関係が悪くなる。らちが明かないので彼の寝床にいってみると、ひとつの動画が記録されたスマホが落ちている。その動画を見ると、どうも人殺しの現場を撮影したように見えるが、ディレクター古賀はこんなの作り物でしょ?といったように馬鹿にする。それを見たカメラマンはおびえてしまい本作から降りることに…。そこからはネタの確信に触れるのでこの辺でやめておくが、本作で重要なのは誰もがウソと判断する自称・霊の存在である。制作過程の裏側を見ながら、そのウソをどう見ていくか。フェイクドキュメンタリーといった、真偽性の曖昧さを的確に抑えた結末が待っている。一風変わった作品であるが、フェイクドキュメンタリー史に記録される傑作である。また、次の年に公開される『妖怪カメラ』(2015)*1はこのていをさらにバカバカしいウソによって、またもや一風変わった傑作にしているのでこちらも要チェック。

*1:『監死カメラ』シリーズのスピンオフである。シリーズものになると予想していたが、1巻で終わってしまった。ぜひシリーズ化していってほしいのだが、本編である『監死カメラ』がシリーズ終了となった今、難しいことだろう。