物語から遠く離れて――M・ナイト・シャマラン『スプリット』感想
M・ナイト・シャマラン『スプリット』を見た。短め感想。『スプリット』及び彼の過去作品の結末(次の段落から早速してます)にも言及しているので注意してください。
どんなに結末だけの人と言われようともシャマランのよさって、彼の作家性の極地である『レディ・イン・ザ・ウォーター』(06)を見ているとわかるように「物語」信じますか/信じませんかってところが大部分を占めていると思う。例えば『ヴィレッジ』(02)の終盤で、目の見えない女の子が化物が変装した人間とわかっていながらも恐怖におびえてしまうといったシーンがある。衝撃的なラストといった名目でそこに対しての言及があまりされないが、本作ですごいのはネタをしっているのに盲目の彼女からしてみれば、それは真実になってしまうことだろう。本来、先にネタを言わないほうがサスペンスフルな時間を味わえるようにも思えるが、シャマランはそういった映画技法から離れたものを求める。嘘が誠になってしまう物語を…
※ここから『スプリット』を見た前提に感想書いています。
さて、『スプリット』であるが、正直なところあまりノレなかった。多分、この映画を活かすためにシンメトリーちっくなカメラと視線*1、そしてアニヤ・テイラー=ジョイの顔立ち(目が離れた)といった凝り方が、妙に主題に対して誠実な気がして苦手。人格が分かれたものを演じるっていうマカヴォイの演技にもあまりピンとこないし。そういった主題に沿ったものをステージの上に広げられても、ひとつひとつのシークエンスがどんくさいのがノレないもうひとつの原因。終着点がヒーロー映画的なところがあるので、対峙する怪物を出さなければならない訳であるが、運動神経が悪かった。気がついたら後ろを横切っていた的な演出もタイミングが巧くないし、カメラが効果的に動きを捉えられていない。*2密室と鍵のシークエンスもハラハラしない。終盤、一直線の廊下演出が面白くない。電燈を破壊して暗さを恐怖に繋げようとしているのだろうか、これもハラハラしない。やはりここでも檻に閉じこもるって主題に沿ってしまう。
各シーンのどんくささからかズレを感じなくもないんだけど、個々のシークエンスがどうもダメでノレなかった。主題的な面からいえば最後にアイレベルを共有できるってところで泣きそうな気分になるんだけど、グッとこないんだよねこれが。問題が共有される作品と作品のクロスオーバーにニンマリとしてしまったけど。ただそれが頭でっかちの映画にしているように思える。着地点から映画が作られてしまったような。やっぱり、怪物の怪物感がなさ…*3結局のところ単に「わっ!このシーンすごい」ってのがなかったってところだろうか。物語や主題からハズレたハチャメチャなシーンが見てみたい。このような想いは贅沢だろうか。今回は物語を信じられなかった僕の完敗。『サイン』、『アンブレイカブル』(00)、『レディ・イン・ザ・ウォーター』(06)、『ヴィレッジ』はめちゃんこ好きだったんだけど。さようならシャマラン…と、さびしい思いをした『スプリット』でした。
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