その拳で打ち抜け!『ViVid Strike!』 #8「勝者と敗者」感想

今回の『ビビスト』本当に素晴らしかった。本作はこれまで『なのはシリーズ』のスピンオフであることを主張するかのように、リンネとフーカの物語に注力を置いていた。しかし、今回のエピソードは『なのはシリーズ』という軸にあることを踏まえ、過去作に敬意を表している。これほどまでに感動的な瞬間が存在するだろうか。

また面白かったのは、今回ヴィヴィオvsリンネ戦は『はじめの一歩』へのオマージュ一色だった。フーカが『あしたのジョー』の矢吹丈的な立ち回りをしているかと思えば、リンネを纏うのは幕の内一歩。フリッカージャブ、スイッチからのサウスポースタイル。ガゼルパンチデンプシーロールと、猛獣のようなリンネを調教するように次々に技を繰り出すヴィヴィオ

ご先祖様から受け継いで、ママに育ててもらったこの身体は、いつだって私の無茶を聞いてくれる。思った通りに動いてくれる

まるで鬼神のようなリンネの重い攻撃を耐え忍んだヴィヴィオ。スイッチしたときの足の踏み込み「こりゃなのはだ!」と泣けてくる。『なのはシリーズ』の物語をしっかりと理解しているからこそ『はじめの一歩』オマージュをしても作品がブレない。強靭な物語・世界があるからこそ技術に呑みこまれない。アクセルスマッシュ・インフィニティを放つ瞬間の輝く拳を見ると、1話でフーカを纏う光を思い出す(硝子が割れ光が反射する,レンズフレア…)。技法(表現)は違えど各エピソードで光の意識が自覚的な作品だ。

また『ビビスト』で面白いのは、フーカやリンネたちの事実認識とこれまで視聴者たちが見てきたシリーズの認識との相違だろう。

この子のことは知っている。エリート公務員の親に育てられて、教会系の名門校に通って、たくさんの優しい大人たちに囲まれて、何不自由なく育ってきた。生まれつきのお嬢さん

リンネやジルなどの一般人からしてみれば“高町家”についての情報は入ってこないだろう。ヴィヴィオがどういった境遇で生まれ過ごしてきたか、こういった背景も見え隠れしてくる面白さもある。入射光でなのはとフェイとの顔が隠れているのは、そういった人との認識(視聴者やリンネの)の差異を示していると考えられる。結果的にヴィヴィオが勝利したけど、今回の物語はフーカとリンネが主人公なんだよと。直接的になのはやフェイトといった名前を出さなくても戦闘スタイルでヴィヴィオが彼女たちから継承されたものをぶつけているからまた泣けてくる。

絶対にヴィヴィオが負ける展開かと思っていたのでびっくりした。ここからリンネがさらに闇堕ちしてフーカが殴り込む展開になるのだろうか。今回のエピソードは年末に迎える「話数単位ベスト10選」にも選出したいエピソード。今の段階で1話、4話、8話、と3つのエピソードを選びたくなる。いずれにせよあと4話しか見られないと考えるとさびしくなるものですが、このまま突き抜いてほしいね。