『NHKスペシャル 終わらない人 宮崎駿』 『ユリイカ2016年11月号 特集=こうの史代』――アニメーションと運動
『NHKスペシャル 終わらない人 宮崎駿』と『ユリイカ2016年11月号 特集=こうの史代』見て(読んで)、考えることがあったので少し残しておく。
『NHKスペシャル 終わらない人 宮崎駿』ドワンゴの川上会長とのいざこざで話題になっており、鈴木敏夫の策略だとか……いろいろ流れていますが、見ておきたいポイントとしては、初めてのCGアニメ制作を始めて、天才・宮崎駿が苦戦を強いられている。彼自身も年齢からか体の調子がよくないだとか「死」を予見するようなコメントもされており、見ていてたいへんおっかない(怖い)、と思えるドキュメンタリーだった。彼が悩んでいたのは『毛虫のボロ』の冒頭。毛虫が卵からかえるシーンだった。「初めて世界を見るような動きをしていない……」修正は困難を極め自らペンタブで動きを付けるなどを実践していったが、刻々と時間が過ぎていく。
その解決としては卵の周りに更にキャラクター(得体のしれない夜の魚)をたくさん動かすことだった。実際に制作過程を生で見ているわけではないので、私が考えていることがあっているかは別として、恐らく「初めて世界を見るような動きをしていない……」のであれば、世界をもっと魅力的(というか興味を持てるように)に表現することが必要だったのではないだろうか。ボロ(毛虫)の周りの世界を動かすことで、興味をもった動きをするようにできる。小さい子供が動くものに反応するのと同じ考えなのだと思う。ようはアニメーションの問題解決には「運動」が必要だった。のではないか?と至極基本的かつ明瞭な回答だったのだろうと。
神作画という言葉(神が何を指すかは別として)がネットでよくいわれるようにアニメ、アニメーションに惹かれる人の多くは、やはりそういった運動が好きな人が多いのだろう。ちなみに、運動についてはカナダのアニメーション作家ノーマン・マクラレンは映画について下記のような言葉を残しているようだ。
「私にとって、すべての映画は一種のダンスである。なぜなら、映画の中で最も重要なことは運動、動きなのだから。何を動かすかは関係がない(俳優であれ、オブジェであれ、絵であれ)どんな方法で動くにせよ、それは一つのダンスなのだ」
ノーマン・マクラレン - Wikipedia
彼の残していった作品は後世にも影響を与えており、現在大ヒット中の『この世界の片隅に』のあるワンシーンでは、ノーマン・マクラレンの『線と色の即興詩』といった作品にオマージュを捧げていることがわかる。ノーマン・マクラレンの「フィルム・スクラッチ」といった技法(のオマージュ)であり、主人公が体験するとてもインパクトの強いシーンで採用されているのだ。『この世界の片隅に』にてどのような効果を得ているかは、『ユリイカ2016年11月号 特集=こうの史代』で土居伸彰さんが触れられているので是非読まれたい。
動き(やショット)を追い求めてきた男がCGで何を見せてくれるか。また興味深いですね。まだ公開日とか決まっていなかったと思うけど気長に待ちましょ。
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