大人にならないという話ではない?スピルバーグの『フック』を見た。
スピルバーグの『フック』を再見しました。
話に入る前に、そもそもなんでスピルバーグのフィルモグラフィーを見ても、決して代表作でもなければ、どちらかと言えば、撮ってたことも忘れられていそうな映画を見たかというと、先日、黒沢清の『映像のカリスマ』という初期の評論集を再読していたときに、こんな掴みで『フック』を語っていたからである。
やっかいな映画が登場してしまった。スティーヴン・スピルバーグが撮った『フック』と呼ばれるその作品は、これまで彼が練習に練習を重ねてきた陶酔のテクニックを全編にわたって散りばめた映画だ。しかし、それがあまりに無目的であるが故に、我々はとりあえず身を硬くしてしかこの陶酔に接することができない。”この男、いったい何のためにこんなこと続けているのだろう”。『映像のカリスマ』- どこまでも観客に向けて作られた作品 - P305より
正直、『フック』については、小さい頃にぼけーーーっとしながら見たので、殆ど記憶になかったのですが、黒沢清の評論を読んでいて、そんなにわけわからなかった話だったっけ?だって、「ピーターパン」が下敷きにあるわけだから「大人になれない、いや、ならない話でしょ?」って。ところがどっこい、再見したら印象がまるっきり違ったというか、行き当たりばったり?いや、何か意思を持ってそうしているかのように、意味が分からない。狂っている。
この男、狂った、そう言われても文句は言えまい。大雑把に並べると、まず”みんな大人をやめて子供になろう”から始まって、いつの間にか”父親は父親らしく”というまったく逆の主張にすりかわり、最後はいきなり”人生は冒険さ”だ。ピーターパンを下敷きにしたこの物語の辻褄は”人生は退屈で、夢の国にこそ冒険がある”というところに合わせてあるのではなかったのか。そうでないなら、フック船長とはいったい何だったのか。『映像のカリスマ』- どこまでも観客に向けて作られた作品 - P308より
黒沢清が言っているとおり、筋が全く通らないんですよね。ネバーランドを忘れた主人公ピーターパンは、企業弁護士で、話を聞くとM&Aのようなことをやっている会社。始まって早々、子供達との約束は守れないし、ロンドンに行っても会社のことは忘れられない。そして、ウェンディには「海賊になってしまったのね」とこの物語を確信つけることを言われる。そう、彼は妻となる子に恋をしネバーランドを忘れ、大人になってしまった。ネバーランドでいう海賊に…成り果てた。
もう素直に子供達の絆と信頼を得る為に、ネバーランドへ行って、純粋な気持ちを、幸せな気持ちを取り戻してフックと戦い、現実世界へ帰る。ってそのまま表層的に読み取ればいいんですけど、よくわからないでしょ?この後、『ジュラシックパーク』、『シンドラーのリスト』を撮っていると思えば、微妙な時期に狂った映画監督が、狂った映画撮ったという風に感じてしまう。多分、本人にとってもいい時期じゃないだったろう。
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だから、多分、過去ピーターパンであった人たちへの警告でもあったり、青春の記憶のようなものだったりするのだろう。だから、一応、完全には子供に戻れないよってネバーランドからは抜け出す。
「お前ら、大人になれよ!!!」
って言われている気がしますね。嫌いじゃないですよ。好きでもないけど。あと、ビジュアルがダサいといいましたが、あのご飯も酷いよね。まったく美味しそうじゃない。ここまで飯が不味そうな映画もすごいっつーか。これは妄想であり、やっぱり…「大人になれよ!!!」(一段ぶり二回目)という警告ではなかろうか。
だから、”大人にならない、なれない話”でもなくってのが前提なのかも。最近だと、大人にならない話ってのは、まどマギの劇場版「叛逆の物語」でも語られていた。
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中年の親父がけちょんけちょんに、バカにされた子供達のヒーローに。まったくもって支離滅裂、いや、筋書きは見たままなのかも知れないけど、ヘンテコな映画。スピルバーグが何を考えて、ジュラシックパークの前に作ったのか、わからないけど、やっぱり、変な人なんだと思うよ。それだけに、気になる監督。特に、支持するわけじゃないけど、まっとうに見せかけて、狂った映画みるなら、『フック』が引っかかるんじゃないすかね。フックだけに。
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