心霊ビデオと都市伝説の相性『トイレの花子さん』(松岡錠前,1995)
白石晃士の『フェイクドキュメンタリーの教科書』を読んだ。ちょっと自分のなかで引っかかっているフィクションの可能性について何か掴むチャンスになるかな、と思っていたのだけど今まで考えていたことの再確認的な内容だった。やっぱりキーは『邪願霊』(1988)あたりのJホラーという言葉が確立される前の作品かな。TVなら『霊のうごめく家』(1991)あたりでしょうかね。『ほん呪』やら心霊ビデオは死ぬほど出ているけど、白石晃士は新たにPOVとしてJホラーに深く根付いていた怪談話・都市伝説を現代に甦らせている。僕はテン年代を学生として過ごしていないので最近の事情が分からないが、TVでもなかなかホラーなんて放送されなくなってしまったし、お茶の間に届く怖さってのは心霊ビデオが唯一生き残っている媒体のひとつなんじゃないだろうか。
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松岡版『トイレの花子さん』は前田愛と兄貴そして転校してきた綺麗な少女の3人が主要人物。転校してきた河野由佳が通称「花子さんトイレ」に入ってしまう。それをたまたま見た同級生が「あの子が花子さんだ!」と広めてしまい、いじめられる原因となってしまう。普通だったらそれだけでいじめられないのだけど、偶然が重なってしまったり近くの学校で起きている連続殺人事件で学校全体の雰囲気がおかしくなっていて、ちょっとしたことでも何かが起きてしまう環境下にあった。「花子さん」の話なんて大体どれも一緒だけど、学校とトイレがキーとなると”いじめ問題”が人々の意識下に現れるのは必然だろう。実体験だけど、小学生の頃トイレの個室に入ることはちょっかいを出されたりバカにされる可能性があった。なぜそうなのかはわからないけど、小学生は「う◯こ」だったり「ち◯こ」などのわかりやすい単語に躍起になる。だからトイレってのはそういう場所だったんだろうな、というのはわかるけど我ながらにアホだったよね。ようは、そういった幼心に宿るトイレの個室を避ける理由のようなものが「花子さん」を生み出していたのではないか?という意見。ただ、女性視点になると「全部、個室だよバーカ!」とか言われそうなんだけど、少なからずこんなニュアンスはあるだろう。
『トイレの花子さん』はそういった要素以外にも血だらけの廊下、ヤギの首、鎌を持った殺人犯が襲ってくるといったショッキングなシーンが混入されたり、道具を使って小学生の心理描写を繊細に表現したり映画としてもなかなか素晴らしい作品だ。白石晃士がこれを見て「花子さん」=「友情といじめ」の話と認識したのも頷ける作品だと思う。まあ、何であれ『学校の怪談』やこういった優秀な怪談・都市伝説映画がなかなか現れないのは寂しいけど、現代に心霊ビデオ・POV作品で数多く見られるような環境になったのはこういった作品の功績だと思うし、思い出したときに積極的に再認識していきたいね。
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