『Go! プリンセスプリキュア』第9話「幕よあがれ!憧れのノーブルパーティ!」の手繋ぎ演出について

今年の『Go! プリンセスプリキュア』(以下『プリプリ』と略す)がめちゃくちゃ面白い。1話から『ウテナ』『プリンセスチュチュ』あたりを想起させる設定やモチーフが話題になったり、「ウレぴあ総研」でライターされてるストレンジャーさんが自身のブログで、アニメと音楽とのクロスオーヴァー『Go! プリンセスプリキュア』の"勝手にしやがれ!!" - クローズとシド・ヴィシャス - ご機嫌よう。さようなら。)について語られていたり、一つの視点からだけではなく、様々な視点から語りうることができる『プリプリ』は盛り上がりを見せている。

その理由の一つに前回の『ハピネスチャージプリキュア!』が、プリキュア同士の話というよりも、異性との恋愛を語り、TL(実況)での「ブルー死ね」を生み出したこと。それに対して『プリプリ』では、「百合」方面に振ったことが、功を奏していると感じる。また、『ウテナ』を感じさせる王子様とお姫様との関係(憧れるベクトルは別だが)の要素が、例えば『白雪姫』などのグリム童話に代表される、古くから語り継がれるような一般的な物語なので、が子供達にも受け入れやすいのではないかと思う。

その一般的さや、シンプルさが分かりやすさに繋がっているし、先日放送された第9話でもそういったシンプルな物語・演出が設置されていた。ズバリ第9話はいわゆる「百合」っぽさ。例えば、きららがはるはるとイチャイチャしたがったり、やたら、みなみ会長とはるはるがボディータッチするといったような楽しみ方ができる回だったこと。それに自分の「恐怖」との向き合い方を、人と人との繋がりで克服する。それを効果的に演出したのが「手繋ぎ」だった。

今回、ホラー映画監督(是非頑張って欲しい!)を目指す男子学生がゼツボーグにされてしまい、ダンスタイムを目前としてパーティが中断される。ダンスタイムは人と人との繋がり、コミュニケーションの場である。ホラー演出でダンス会場の光を奪ったのは、それを阻止する効果を生んでいる。照明が落とされた後のカット(上段写真参照)に注目すると、みなみ会長やモブキャラ(ではないか)の手のカットが印象的に撮られていることがわかる。

そして、このホラー演出は「みなみ会長は幽霊が苦手」という事実によって、怖がる(相手から目を背き、手で頭を抱え込んでしまう)ことで、彼女がコミュニケーションを取れなくなることを示している。

思わずぐっと来るのがこの二つのシーンで、一つ目がはるはるがみなみ会長の手を繋ぐカット。これまで何でもできる(けど天然)みなみ会長だったけど、「だって仕方ないじゃない。怖いものは怖いもの」と初めて後ろ向きな発言をするが、はるはるが自分自身の「恐怖」だったことを語る。そして、お母さんにこうしてもらったとみなみ会長の手をとる。これは見た目通り「はるはるからみなみ会長へ」というカットであるが、はるはるが語るように、彼女の記憶内のお母さんとの繋がりを含め、「はるはるのお母さんからはるはるへ」そして、「はるはるからみなみ会長へ」という三者を繋いだカットである。そして、あれほどプリンセスになると言っていたはるはるが「今日は私、学園のお姫様(プリンセス)を守る騎士(ナイト)になります。」と他者のために、大人な対応を見せる。そして、その隣のカット。はるはるから受け取ったものを、みなみ会長は「踊りましょう。騎士(ナイト)さん」と受け入れ、自分からはるはるの手をとる。そう言った人から人への繋ぎ、「恐怖」の克服及び、他者への信頼を手を繋ぐことで、シンプルに語る素晴らしい演出である。

こういったように、人から人へ受け継いでいくような演出をさらっとやってしまう。そして、過去の作品を感じさせるような設定やモチーフなど、プリキュアにしてカルト化が叫ばれるような作品だと思う。今のところ、全話見所があり、本当に面白い。ニチアサ枠だけの語りではなく、テン年代のアニメベストとしても期待される作品じゃないだろうか。今後も期待ですね。