インターネットでの再放送――久しぶりに『輪るピングドラム』(2011)をAbemaTVで見返した

ツイッターでやたらやかましく宣伝活動をしてたのだけど、AbemaTVで輪るピングドラム』(2011)を鑑賞した。『ピングドラム』は2010年代のなかでもベストクラスに好きだし、オールタイムベストを考えても少なくても100本に入るだろう。好きな作品なので個別にエピソードはたまに見返すことがあっても、全話通してみる機会はなかなかない。昨今ネット配信が盛んだけど、Abemaは「再放送」って位置づけを見事に獲得したと思う。ニコニコの一挙配信もあったりするけど、ある決まった時間に昔のアニメが放送するっていうと、円盤を持っている人でもちょっと見てしまったりする。SNS時代だからこそ、誰かと何かを共有するといったことの素晴らしさってのがあるよな〜と感じた。昔はこういう考えにも及ばなかったんだけど、そこからの語りってのがあってもいいんだと思う。

この『ピングドラム』って作品がそういった繋がりを強固にしていくんだと思う。ド直球に「愛」についての作品だけど、動詞としての「愛」を相手に与える(思いやる)ってことなんですね。24話は涙なしでは語れない訳ですが、結局のところそれまでの23話の積み上げがあったからこその24話なんだよね。キャラクターだけでいっても、苹果ちゃんなんて「プロジェクトM」とか気が狂った作戦を実行しようとするけど、彼女も何かを失った(痛みを知った)者であり、バックグランドが回を重ねるにつれて見えてくる。最初に出てきたときに誰が「運命の果実を一緒に食べよう」と運命の乗り換えを遂行しようとする愛のあるキャラクターに見えただろうか。こういったキャラクターの変化(実際は変化していないが)が、物語を愛おしいものにする。

真砂子なんかもほんとうそんなキャラクターだと思う。22話のバックショットがあまりにもキマり過ぎてて、それで24話のマリオと冠葉の話をするところなんで号泣だよね。変わって欲しくない瞬間が、乗換によって微妙に違う世界になっている。記憶は引き継がれていないけど、どこかで何かとつながっている感覚。どうしようもなく愛おしい。みんな抱きしめて「大スキだよ!!」って伝えたい。

完全にスタッフのこととか忘れてたんだけど、陽毬が多蕗につかまってしまうエピソード・18話「だから私のためにいてほしい」は山内重保コンテ・演出なんだよね。あっ出崎っぽい(出崎でないとはわかっていても)って思ってたら、山内重保だから、やっぱりこの二人の演出は手法は違えど根底は似ているのかもしれないって感じた。山内重保というと、画面全体に顔をど〜んと映したり、ロングショットを多用したりするんだけど、やっぱショットと時間の人って感じなのかな。『キャシャ―ンSins』(2008)でキャシャ―ンが飛ぶシーンとか躍動を感じながらも、ゆったりとした時間を獲得してる。詩的で美しく、儚くて今にも壊れそうなっていう。『ピングドラム』18話でいうところの陽毬を載せた籠みたいなものが落ちるシーンかな、言語化しにくいけど、あそこでそういった時間を感じた。出崎が繰り返しショットやハーモニーを使うのと同じような効果が出てるんだよね。ほんと食い入るように見てしまったよ。

ほんとAbemaTVは素晴らしいね。昨年ウテナの放送やったと思えば、20周年でまたやってるし(笑)新作/懐かしの/深夜とかアニメひとつにとっても複数のチャンネルがあるし、こういうのいいよねってほんと思う。アニメは映画と違って短くても12話見なければならない。毎週継続して一つのアニメを見るってのは慣れるまで大変な行為だと思う。正直忙しいと録画がたまってしまって追いつくのも大変だったりする。そういったときに、再放送って枠がテレビ以外に存在している(しかも無料で)ってのが結構重要なんじゃないかと。ツイッターのリンクからスマホで鑑賞するってことだって可能。そりゃ出来れば大画面のモニタないしスクリーンで見るということがベストではあるが、それよりも初めて見る人が見る機会を得るほうが重要。気軽だけど、ガッツリと胸打たれるのもいいだろうって。

例えば『ピングドラム』で初めて幾原アニメに触れた人なら、このまま『少女革命ウテナ』(1997)に行ってもいいし、『ウテナ』が強烈過ぎるならちょっと見やすい『劇場版美少女戦士セーラームーンR』(1993)に行くのもいい。今のところ幾原アニメの最新作である『ユリ熊嵐』(2015)にいくのもいいかもしれない。『ウテナ』の前に幾原遺伝子を辿ってみて、『ウテナ』でコンテマンとして参加した五十嵐卓哉の『STAR DRIVER 輝きのタクト』(2010−2011)や『キャプテン・アース』(2014)など『ウテナ』の系譜から攻めるのも面白いだろう。五十嵐卓哉ならば『桜蘭高校ホスト部』(2006)も大好きな作品だ。これからアニメを辿って行く人が、どういうところに着目して見るか、そしてどんな影響を受けていくか、これは楽しいことだと思う。これからもたくさんのアニメと触れ合っていきたいし、たくさんの人が素敵なアニメに触れて欲しいなと願ってる。


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