村瀬修功『虐殺器官』覚書

Project Itohとしては『屍者の帝国』、『ハーモニー』に続いて3作目になる『虐殺器官』を見てきた。個人的な伊藤計劃についての思い入れはあまりなくて、『ハーモニー』は好きだけど『虐殺器官』に関しては殆ど忘れていて映画を見ながら物語も思い出した。SFファンでもないので、本作がSF界にどう影響を及ぼしたとか、凄い作品なのかもよくわかっていないのでフラットに見れたと思う。

先に結論からいうと面白い瞬間がほんと出てこなくて、とにかく退屈した。顔アップが多いわりに差異がなく面白くない。まあ、「個性」の映画にならないことは『虐殺器官』的には悪くないのかな、とか思ったんだけど、それにしても面白くなければグッとこないよね。この面白さのなさなんだろうと思っていたけど、わいてきたのは「遊び」が見受けられなかったからかなと思う。「遊び」といっても「演出」なんだろうけど、どのシーン見てても画面で起こっていることに引き付けられなかった。

2006-05-06

伊藤計劃のブログで「ワンカット内で人が死ぬ」っていう文章を書いているエントリーがあるんだけど、例えばこういう演出上の「遊び」があったかというと感じられなかった。そもそもアニメなので長回しには耐えうることができるのか?といったことがあるので、直接的ではなく「例えば」ということにしているけど。それと風景や美術に魅力を感じなかったか。

ただ、題材的に心躍る内容ではないので、“敢えて”退屈に見せるといった手法を選んでいるのだろうとも思う。どうしても会話劇が主体となってしまうので、そこをどう演出するか?がキーだったと思うのだが。いくら目の前で人が撃たれて血が飛び散ったり、人の胴体が切り離されても動いていたって「脅かし」でもなんでもない。スピード・リズムの感覚がもう少し必要なのだろうか。

いづれにせよ面白くするには難しかったのかもしれない。感想をぱらぱら見ていると『CURE』を引用したほうが〜なんてこともチラホラ見受けられる。でも、映画・小説・作家とは切り離してしかるべきだと思うから引用は別にしなくてもいいと思う。言語化しづらいので、印象論的に言うけどフィジカルに迫る力強いショットを感じられなかったので、それが欲しかったかな。引用云々の前に面白い映画が見られればよかったのだけど、叶わなかったなあと。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)