『残響のテロル』最終話を見た。

今期は『残響のテロル』や『アルドノア・ゼロ』などの国家を危機に陥れる「テロ」をテーマにもつシリアスな作品が面白かった。「テロル」は実際に、「地下鉄で爆発が起きる」という地下鉄サリン事件を意識せざるを得ない事件や都庁爆発、空港爆発未遂など「アルドノア」に比べストーリー自身が「テロ」に強い意味を持っている作品。

特に僕が好きだったのは第9話の観覧車内での爆弾解除シーン。これは『グラスリップ』の9話の「月が綺麗ですね」のテーマと似ている。『グラスリップ』では眼鏡っ子が想いを伝えるため、月が見える場所まで連れて行き「月が綺麗」と告白する内容なのだが、『残響のテロル』では更に一歩押し進めた演出がされていた。




「観覧車=ゆっくりと時間が流れる」という環境化での爆弾処理作業、到底不可能なその作業の中、ぱーっと明るくなり、「月」が輝いていることがわかる。だけれども、決して「月が綺麗だ」なんて感傷に浸らず無言のまま。そこから観覧車をロングショットで捉える。アニメという表現で「言葉を使わない」のは究極的な表現だと思っている。役者に演技をさせない、彼らをモデルと呼ぶブレッソン級の演出ではなかろうかと思う。(言い過ぎですだし、演出のベクトル違いますね。ごめんなさい)


さてさて、最終話では、原子爆弾成層圏で爆発(高高度核爆発)することで電磁パルスが発生し、範囲は不明ですが、停電する街並が描写されていました。最終話の前半、彼らを止めようとする側の柴崎刑事は「あいつはら人を何人殺したのか?」というくだりから、「スピンクスは人を殺していない」「何か伝えたいことがあったのではないか?」という結論に至ります。


スピンクスの目的は「自ら逮捕され日本が隠していたことが明るみになること」でした。
スピンクスの最後の切り札が、成層圏での原子爆弾の爆発による電磁パルスの発生。しかし、「人を殺さない」スピンクスは、「高高度核爆発」によって引き起こされる電磁パルスの被害を考えていなかったのでしょうか?

wikiによると「高高度核爆発」は

【概要】
高度100km - 数100kmの高層大気圏における核爆発においては、大気が非常に希薄であり、核爆発の効果において爆風はほとんど発生しない。核爆発のエネルギーは電離放射線が多くを占めることとなる。核爆発により核分裂後10-11秒以内に発生したガンマ線X線)が大気層の20 - 40km付近の希薄な空気分子に衝突し電子を叩き出す(コンプトン効果)。叩き出された電子は地球磁場の磁力線に沿って螺旋状に跳び、10nSほどの急峻な立ち上がりで強力な電磁パルス (EMP) を発生させることとなる。
大気が希薄であることからガンマ線は遠方まで届き、発生した電磁パルスの影響範囲は水平距離で100kmから1,000km程度にまで達する場合がある。この核爆発の影響は、EMPによる電子機器障害がほとんどのため、大量破壊兵器の使用であると同時に非致死性の性格も持つ。
高高度核爆発の実験を行ったことが確認されているのはアメリカ合衆国ジョンストン島とアーガス作戦)、ソビエト連邦カプースチン・ヤール)の二カ国である。これらの実験では周辺での停電などの被害が発生した。
目標までの精密誘導が必要な核ミサイル攻撃に対し、EMP攻撃はミサイルを敵国の上空高高度で小規模の核爆発を起こして発生させるため、技術的にも比較的容易と見られている。


このように、100キロ〜1,000キロの被害が出るように書かれています。


実は、スピンクスは柴崎刑事を信じることによって、被害が抑えられると考えていました。警察が国交省などに鉄道や病院に連絡するよう伝えている描写が見られ、スピンクスの計画通りに進んだことがわかります。
そもそも、「テロ」を起こす相手が「人」を信じなければ成立しない計画を考えていたのは、なんという皮肉というか人間愛なのでしょうか。彼らは今まで家族と呼べる人はいなかったので、(特にツエルブ)リサと出会えて本当に良かったと言っています。少なからず、この計画は柴崎刑事を信用しなければ成立しません。だから、彼らは深層心理、無意識の奥底では人を信じたかったのかもしれません。自分たちの過去に問題があったとしても、彼らにとってこの世界は、守るべき・信じるべき世界だったのです。


ただ、柴崎刑事がいなかったらと考えると、とても怖いこと。もちろん、核が成層圏で爆発するなんて気づかなかった可能性がある。その時は、鉄道はもちろん病院にも多大な被害で被害者が出た筈だ。ただ、アニメならまだしも現実だったら、柴崎刑事のような人間がいて事件の全容がわかっても、そう簡単に交通網と病院すべてにうまく情報が伝達するとは思えない。また、自宅介護はどうなのか?と考えたらキリがないのである。
だから、「アニメでよかったー」と思うところ。アニメの話だけど、思考するととてもリアリティがある話で、アニメでなくても映画でもよいが、こういった創作が世界には必要なんだと改めて思えた。

ノイタミナの次の枠は「サイコパス2」ですね。これもかなり楽しみなので、期待して待機。以上