ジュリア・デュクルノー『RAW〜少女のめざめ〜』

予見させるオープニングシークエンス。広々とした一直線の公道に走る車。そして、ロングショットでは顔がわからないひとりの人物。急に飛び出した人物に急ハンドルを切る車。切り返して車がぶつかるショット。そして、さらに切り返して元のショットに戻す。出のショットはよかったが、そこで切返さなくてもいいだろう…といったところで切り返してしまう。何かが始まる予見と共に、嫌な予見が同時に来る。

カニバリズムベジタリアン、上下関係、通過儀礼、抑圧からの解放…。カニバリズムは拾った指を深刻そうに食べるといった面白みもない映像に回収され、ベジタリアンはうさぎの肝臓を食べることを嫌がる少女と腫れ上がった少女の身体をカメラにおさめる。上下関係は『キャリー』かよっと血の雨を降らせる。全体的に映画というよりも、映像見せたがりの画面になってしまっているのが面白くない。2回目の事故シーンや、姉が押す車椅子など、せっかくいいシーンがあるのに途中途中混入される詩的だろと言わんばかりのショットやスローモーションにゲンナリ

痛い映像をとっていても、食べるシーンに面白みを感じない。ゾンビ映画のように美味しそうに衝動のまま人間を食べてみてはどうだろうか。いかにもマッチーが好きそうな映画だなと思えば、去年のベストに入れてんだな。

映画秘宝 2018年 03 月号 [雑誌]

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