諏訪敦彦『ライオンは今夜死ぬ』

記念すべきファーストショット思わず、「眩しい!」と言いたくなるような太陽光が顔に反射するショット。気がつけばその老いた俳優(ジャン=ピエール・レオ)もまた眩しそうな顔をしている。ボソボソと独り言を話していると思いながら、映画を見ているとそれは映画の撮影現場であることがわかり、まさに映画を撮っている瞬間なのだと認識する。女優が部屋にこもったまま出てこないとなり、急遽予定が空いたジャンはバカンスに出かける。

映画とシンクロするシーンから始まる映画は、やがてジャンに奇妙な体験をさせることになる。知った街である女性に会いにいったジャンはその女性に「私に会いにきたのではないのね」と諭され、ある古びた屋敷に入っていく。そしてある部屋にいくと廃墟のような屋敷なのに綺麗に清掃され、ベッドまで完備されている。彼を待ち続けただろう写真に映る娘は、彼に鏡の前に立つこと命令し、合わせ鏡になった部屋を横切ると、ふらっとまるで部屋の隅に隠れていたかのように写真の娘が姿を表す。

「訪問」の映画だ。ジャンがベッドで横になっていると、何やら外から騒がしい子供の声が聞こえてきて、ドアをバタッと開く。思い出の場所で静寂な時間を堪能していたジャンは両手を挙げ「わーっ!!」とバケモノのように振舞ってみせる。ジャンがどこへいっても俳優のように演じて見えるのは、映画が複製であり、そこに映るものは幽霊のようなものだからだろう。幽霊のように振舞ってみたジャンは、撮影機材を持った子供たちに後をつけられ、元恋人の墓を訪れる瞬間をビデオカメラにおさえられてしまう。

その後、子供たちは何度も屋敷を訪れ、ノックを繰り返し、彼に屋敷での撮影と映画の出演依頼をする。バカンスだったはずの休暇が、気づけば子供たちのホラー映画に出演することになってしまう。彼は映画から抜け出したところで、映画に組み込まれてしまう運命なのである。元恋人の幽霊に取り憑かれ、子供たちのホラー映画に出て、映画のなかでも幽霊と接触するジャン。映画を撮影するひとりの少年もまた父親の死に囚われ、母親の彼氏を認められないでいる。

最初の撮影風景や少年たちの映画、ジャンと少年の関係といい、メタ構造を持つ作品であったが、少年たちの人数の多さが原因か、そのつながりにおいては薄かったと言えよう。確かに幽霊がふらっと訪問するシーンや、いつの間にかに消えていくシーンは感動的なのだが、せっかくのメタ構造があまり活かされていなかった。また、子供たちの撮り方も少し物足りない。子供に着せるTシャツのセンスは抜群で、柔らかい画面に生えているのだが、ジャンがまずは「脚本だ」というように、少年たちが脚本という規定に縛られてしまっており、子供の魅力である無邪気な運動を阻害させてしまったのが勿体ないと感じた。とはいえ、湖での正面切り返しや、幽霊が消えると共に片ずけられる屋敷も映画の息吹を感じさせてくれた。

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