愛おしい映画って――『彼方からの手紙』『無言日記』『心霊玉手匣』

日本映画専門チャンネルで放送されていた『密使と番人』。三宅唱だからってかなり期待したのだが、肌に合わなかった。ロケハンや撮影技術(照明,カットバック…)、音響(録音)、ショットの精度含めレヴェルの高さを伺えるが、どうも馬が合わない。ジャンルを巧くハズしています。若手の演出家がこんな映画が撮れるのです。って披露されているのを暖かい環境でただ眺めているだけみたいな。逆光のレンズフレアの使い方とかどこぞのアニメですかって思うなどと…。とにかく、やっていることが型崩ししているようで、遊べていない印象。体温が低くて、それでいて体液が足りない。iPhoneで撮影始めた『無言日記』があれだけの作品になっているのに、残念な結果だ。

平日だろうが休日だろうがあくる日もカメラで撮っていた東京が、そのファインダー越しの私的記憶と結びついたからか、『無言日記』はそれはもう感動だった。例えば『ヤンヤン夏の思い出』なんかでもそうだが、車窓風景にグッと来る。『無言日記』断片的な記録がつなぎ合わされ、ひとつの映画につなぎ合わされるだけでどうもこんなに泣けるのか。自分と映画の距離感ってものを強く感じる作品だった。愛おしい映画のひとつ。

愛おしいといえば、ゼロ年代の傑作である瀬田なつき『彼方からの手紙』を再見していたのだけど、前にも増して泣ける。ベランダで手をグッと握りしめる瞬間。魔法のようなあの時間。あてもなく夜の街をさまよう無意味な時間。愛おしい。そして、あの引き際。短くてもロードムービーは作れるって証明するひとつの事例。『心霊玉手匣』シリーズの3作目〜4作目の連なりも、もちろんそう。秋に5作目がリリースされるらしいが、今から実に楽しみ。

『密使と番人』を録画し終えたので、もう日本映画専門チャンネルともおさらばかと思っていれば9月に『ヘヴンズ ストーリー』の放送が。まだ契約し続ける必要が…。