夏に見た新作映画

夏からの備忘録ですが、感想書いていなかったのを抽出してみました。殆どFilmarksには上げていますが多少アップデートしています。今週末からは『ダゲレオタイプの女』が始まりますね。これまた楽しみだ。

「もし影に化け物が潜んでいたら?」ライトのスイッチをON/OFFすることで、ゾクゾクと近づいてくる化け物。音もなく急遽あなたの前に忍び寄る…。アイディアこそは面白くなりそうなものであるが、光/影、ON/OFFであれば『キックアス』や『闇動画12』のようなアクションに徹したほうが面白いよなと。心理・音響もベタにし過ぎているから意外性がない。ハズシが欲しい。

  • 『イレブン・ミニッツ』イエジ―・スコリモフスキ

『エッセンシャル・キリング』ぶりとのことで結構期待していたのですが、これが面白くなかった。11分間を様々な視点から観察することで何が起こるのか…といったことになるのだろうけど、映像が説明にしかなっていない。リモザンの『NOVO』ではなく、ノーランの『メメント』的な立ち位置。それと『マグノリア』だという意見もみますが、やってること真逆だと思うんだよね。『手を挙げろ!』とか『ムーンライティング』のような映画が恋しい。

飲み会帰りにギトギトのラーメン5杯くらい更に詰め込んだような濃厚さ。濃厚・過度すぎてもう見たくないって感覚。ひらすら「認識」することの映画なんだけど、これだけエッチな眼球・グロ・フェチ・エロやるなら70分くらいにしてもらいたいものだな…

もう大概のことに興味がなくなったのだろうかイーストウッドと思うくらいあっさりしている。ただ、面白いことは面白い。回想(悪夢)がびっくりするくらい現世とシームレスにつながっていいてそこに怖さを感じる。乗り合わせた者たちの絆なんて興味はないし、物語のラストにシミュレーションで幕を閉じるとかすげえ域に達している(いいのか悪いのかさえわからない)。エンドロールのあれ淡々としすぎてホント怖い。「怖い」しか感想が出てこなかった…

結構不評だなとか思ってたんだけど、見たら案外面白かった。『バッドマンvsスーパーマン』であれば上昇/下降のイメージがラーメンごはんセットのように離れられない関係だったけど、本作のメインはヒーローではなく悪役である。そのため、ひたすらに下降イメージを生成していく。悪役がボロボロになっていく様は嫌いではないんですが、いわば主役が悪役になってしまった場合、どこか琴線に響かなくなってしまう。なのでそんなにヒットはしませんでしたが、最後まで一貫した作りをしていて好感が持てました。

結婚した福山に敵なしか!?もはやリミッター解除セックス!セックス!セックス!と女の尻ばかり追い回す役に立ちまわる。そんな福山が凄く空虚に見えてよかった。ただ、夜のシーンが多いのに全体的にさっぱりした白っぽい画面。写真が等価だろうと、スクープを撮る者としては「光/闇」の認識が余りにもないのではと思ってしまった。もっと暗室を丁寧に扱ってほしい。脚本が苦手なのかとってつけたように見えた濡れ場に心が離れ、まだ続くのかとリリーフランキーの独壇場。『崩れ落ちる兵士』にも『ちょっとピンぼけ』にも“ピン”とキマせんな。最後は女の尻追っかけてトラックに轢き殺されて欲しかった。

今でもスピルバーグは『ブリッジ・オブ・スパイ』といい素晴らしい物語を作る。どちらも撮影だけ見ていくと「どうだろうな」と思うシーンがあるのだけど、それでも「光」をモチーフにするのはとてもうまい。光・夢の物語。人間・BFG・家・巨人・台地・木々の大きさの演出がゲロうま。大きさの演出でいえば『シン・ゴジラ』よりも一枚も二枚も上手か。ボロボロ号泣してしまった。

オダギリを深層的な立ち位置に見立てておいて、そこにズケズケ入り込んでいく松田や蒼井といったキャラクターたち。オン/オフスクリーンの扱いが上手いなと思った。蒼井のダンスにオダギリは時間を奪われただ見つめることしかできない動物園のシーン。時間が動き始めたとき大パニックに陥る。ラストショットとても気持ちよかった。軽やかな映画だった。