東海テレビドキュメンタリー映画『ふたりの死刑囚』『ヤクザと憲法』『死刑弁護人』を3本みた雑感

先日シネマテークにて東海テレビドキュメンタリー選がかかっていたので3本みた。簡単な雑感をば。

◼『ふたりの死刑囚』鎌田麗香

名張毒ぶどう酒事件」と「袴田事件」の容疑者が冤罪を主張するって話。ドキュメンタリーにナレーションが入るとちょっとノレないかな。内容としては釈放されてシャバに出ても外は『収容病棟』(2014)だったって感じで、何十年も拘束されていたものだから、拘束してた時のくせ(同じ場所を行ったり来たりしてしまう)が自分の家でも反復され、小刻みに手を動かしていないと落ち着かないとか…。正直そこまで面白くなかったな。

◼『ヤクザと憲法』圡方宏史

これがスマッシュヒットの傑作!テークのパイプ椅子が埋まるくらい混んでた。まず冒頭の掴みがgoodで、取材班がヤクザの事務所に訪問して事務所を案内され、怪しい袋を見つけると…

「えっ?それなんですか?マシンガンとか…?」
「そんなわけないじゃないですか、テントですよ、テント…」
「じゃあ、拳銃とかどこに置いてあるんですか?いざという時に…」
「そんなものあるわけないじゃないですか、銃刀法違反ですよ?」

と、ちょっと微妙な空気になるのが最高に面白い。最初にこうやって冗談みたいにグイグイ攻められると、一見嘘のようなヤクザ・ドキュメンタリーに疑心暗鬼たっぷりな観客の緊張がほぐれるのでこの構成は素晴らしいと思う。他にも親分について西成から通天閣まで歩いてく途中に、飛田通ったり(婆様が撮っちゃだめでしょっていうところが生々しい)、大阪のおばちゃんの警察の愚痴を聞かされたり、嘘っぽかった冒頭がマジでドキュメンタリーだったんだって真実味が帯びてくる。現実と虚構の境界が崩れ落ちていくような妙な感覚がある。最後にはある組の顧問弁護士がでっち上げで弁護士資格を取られる展開へ…。暴力団排除条例以後はヤクザが食っていけない、差別されるって話になるんだけど裏の世界を少し垣間見た僕はちょっとヤクザも大変なんだな…と映画に呑まれた感覚があった。大傑作。

◼『死刑弁護人』齊藤潤一

「あの人がやっていないっていうから私も信じるの!」ってドラマでありそうな気がするし、ちょっとヒーロー感がなくもないが実際のところ、血反吐が出るほど大変だろうし、そんな人たちにのめり込んだ弁護士が主役の『死刑弁護人』。オウムのあの人とか、毒入りカレー事件のあの人だとか、俺でも知っているような人を弁護している人のお話。ちょっと映画的には真面目すぎる作品になっていたかな。(当たり前なんだけどさ)再審ってなんども同じことを繰り返すので、フューネラルドゥームな世界観なんだけど、繰り返しの美学であるはずが、美学として成立していない。ひたすら呪い、地獄のスラッジドゥームだった。いろんな世界があるな。

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