惰性ブロガーの僕が選ぶ音楽映画ベストテン

毎年このエントリーを見ると「今年も終わりかー」なんて思うのですが、本当に思い浮かべてみても今年は何をしていたのだろうと思う僕であります。ああ、惰性で生きているな…って。さてさて、昨年アニメ映画ベストテンも楽しい企画でしたが、今年は音楽映画ベストテンです。音楽自体は好きなのだけど、劇伴ってあまり頭に入ってこないタイプの人間だし、ちょっと疎いかもなーと思いつつ、パッと思いついたのを選びましたー。では、ワッシュさん集計お願いします。

2015-10-31


01.ロード・オブ・セイラム(2013年、ロブ・ゾンビ
02.今宵、フィッツジェラルド劇場で(2006年、ロバート・アルトマン
03.オーケストラ・リハーサル(1979年、フェデリコ・フェリーニ
04.劇場版 マクロスF 恋離飛翼サヨナラノツバサ〜(2011年、河森正治
05.ヒット・パレード(1948年、ハワード・ホークス
06.THE COCKPIT(2015年、三宅唱)
07.何も変えてはならない(2010年、ペドロ・コスタ
08.ラストデイズ(2005年、ガス・ヴァン・サント
09.レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989年、アキ・カウリスマキ
10.映画けいおん!(2011年、山田尚子

下記に理由などなど。

・ロード・オブ・セイラム(2013年、ロブ・ゾンビ
『デビルズ・リジェクト』やトビー・フーパーの『ハロウィン』のリメイクなど、音楽活動をしながら映画監督も手がけるロブ・ゾンビの『ロード・オブ・セイラム』。一位は全く迷うことがなかった。今作は古典的なホラー映画のオマージュが感じられ、プロットを『ローズマリーの赤ちゃん』から頂戴し、ラストのブリブリ感漂うあるシーンではメリエスの『月世界旅行』の布を飾っていたりと、単なるホラー映画ではないただならぬ雰囲気を感じる。この映画では冒頭のラジオコーナーでブラックメタルバンド(ロブゾンビ作曲だったかな)のPVを冒頭で流すシーンがある。これは「ブラックメタル」の映画であることをハッキリ宣言しているのだ。そして終盤ではノイズ、ストナーロック、電子音などをごちゃ混ぜにミックスし、最終的にジャンルがクロスオーバーした「ポスト・ブラックメタル」のようになっている。過去のホラー映画を引用しながら、ネクストステージへ挑戦した意欲作だと思う。テン年代最高の音楽映画。

今宵、フィッツジェラルド劇場で(2006年、ロバート・アルトマン
ロバート・アルトマンの中で特別一番面白い映画だ、ということではないのだが、アルトマン最後の作品…と思うとどうしても胸が熱くなる。もちろん『ナッシュビル』は超傑作であり、僕のオールタイムベストではあるんだけど「音楽映画」と聞いた時、思い浮かべたのは本作だった。出演者が奏でるハーモニーにただただ涙を涙する…。

・オーケストラ・リハーサル(1979年、フェデリコ・フェリーニ
「音楽とは狂気である」狂騒の末、世界をぶち壊すあの鉄球!あの空間設計、あのSEX、フェリーニでしかない!(適当なコメント)

・劇場版 マクロスF 恋離飛翼サヨナラノツバサ〜(2011年、河森正治
「音楽とは愛である」歌で戦争を終わらせるデタラメさがたまらない。『愛おぼえていますか』と迷ったが、昨年のアニメ映画ベストテンに選んだのでこちらに。近年のCGをガンガン使ったアニメにおいてもトップクラスのクオリティじゃないだろうか。何よりもシェリルとランカのライヴの客席に“自分”がいるな、、とどうも他人事には思えない。最高のハーモニー。

ヒット・パレード(1948年、ハワード・ホークス
「音楽は互いに影響し合う」百科事典の製作のために俗世を知らなければと、ギャングの愛人と恋に落ちる自身の『教授と美女』のセルフリメイク。映画的には『教授と美女』の方が傑作だと思うし、何よりもバーバラ・スタンウィックがお美しいので大好きなんだけど、それをクラシックとジャズのクロスオーバーに仕切り直したハワード・ホークスはすごい。お互いに影響し合うってのが、クラシックージャズの関係と教授ー美女の関係の二重性を孕んでいる。脱帽の傑作ですね。

・THE COCKPIT(2015年、三宅唱)
「音楽とは楽しいものだ」と、『THE COCKPIT』を見ると心底感じるだろう。大人たちが楽しそうに笑いながら「俺が、俺が、」と前へ前へラップしてくる。常に画面が「顔」で支配されていたように、締めくくりのクローズアップ。リズムと遊びの映画。今年のベスト候補の一つでもある。

・何も変えてはならない(2010年、ペドロ・コスタ
ジャンヌ・バリバールの音楽活動をおさめた映画。ペドロ・コスタの映画を見ていると、ドキュメンタリーなのか劇映画なのか、境界線が非常に曖昧である。というか、ドキュメンタリーと劇映画という切り分けは存在しないのではないかと感じさせるのだ。ライヴシーンがあるといっても一般的な音楽映画のようにカメラをバシバシ切り替えず固定されている。その他にもジャンヌ・バリバールの顔をアップで捉えたレコーディングシーンを映しているだけではあるのだが、「なぜこんなに美しいのか?」と無性に涙が出てくる。それほどショットが素晴らしいのだ。果たして彼がもともとパンクバンドをやっていた事実は本当なのだろうか、と疑うほど現代の映画監督の中で飛び抜けた存在だろう。マジで傑作。

・ラストデイズ(2005年、ガス・ヴァン・サント
「音楽とは孤独である」『ラストデイズ』は輝かしい音楽の栄光を描いた作品ではない。全く救いようがない、アーティストの闇を描いた作品である。ガス・ヴァン・サントは『ジェリー』『エレファント』と、人間の極限状態の虚無のようなものを描いていたが、『ラストデイズ』はその究極だろう。仮にこれがカートでなくてもこの映画は映画として素晴らしい。大傑作。

レニングラードカウボーイズ、モーゼに会う(1994年、アキ・カウリスマキ
「音楽とは旅である」フィンランドの田舎バンドがアメリカーメキシコへ旅に出て栄光の道へ走り出すロードムービー。キャデラックでアメリカーメキシコを駆け抜け旅先でライヴをする。コメディなのでロードムービーと言っても感動するような映画ではないが、こういった力の抜けた音楽映画もあっていい。

映画けいおん!(2011年、山田尚子
「音楽とは青春だ」と思う。バンドマンって見た目すごく若く見えるんですよね。命を燃やすように…なんていうけれど、バンドマンは本当に命を燃やしていて一生懸命音楽やって輝いているんだよなあ。『けいおん!』が命を燃やしているかは別として、テレビでやれることをわざわざ映画にしてっていう“ゆるさ”と、ロンドンに女子高生が行ってライヴしちゃう荒唐無稽さが何より気持ちいい。『リンダ リンダ リンダ』と迷ったのだけど、「天使にふれたよ!」の破壊力に負けました。輝ける青春の1ページ。


◼まとめ
強引でしたが「メタル」「ジャズ」「クラシック」「グランジ」「ロック」「ヒップホップ」「アニソン」と様々なジャンルから一応テーマ別に選ばせて頂きました。絶妙にテーマをずらしてみたが果たして…。
さてさて、今年の「音楽映画ベストテン」チョイスがいいですよね。というのも『セッション』での菊池vs町山の構図をどうしても思い浮かべてしまう。まあ『セッション』は音楽映画ではないってのが前提としてあるんだろうけど、話題になりましたからね。今年であれば『味園ユニバース』とか「歌に負けた!」って思う瞬間ありましたし、ランキングで選んだ『THE COCKPIT』素晴らしい映画でした。昨年の『ジャージー・ボーイズ』しかり、最近いい音楽映画多いと思います。また今年はアニメでも『響け!ユーフォニアム』や『四月は君の嘘』と、音楽に関係するアニメがありました。どうしても音楽が好きなので、多少あれかなと思っても最終的に「音楽に負けた」(『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』なんてそれの代表格)となってしまうのですが、これからも感情を揺るがす音楽映画がたくさん作られるといいですね。