ラノベ主人公の強靭なオタクの性/『冴えない彼女の育てかた』

ノイタミナ枠『冴えない彼女の育てかた』(以下『冴えカノ』)が面白い。現在ノイタミナ枠で9話まで放送されているが、面白さで言えば『SHIROBAKO』や『君嘘』に次ぐ面白さじゃないだろうか。というか、その二つが強靭な作品過ぎて、なかなかそのレベルに達するのが難しいということもあるが。しかし、これまでノイタミナ枠でラノベ原作を扱うことはなかなかなかった。それほどまでに「ラノベ」が市民権を得てきていると言ってもいいのだろうか。

『冴えカノ』は自分の理想のギャルゲーを作ってコミケに売り出そうとする高校生を主人公とした青春物語だ。彼はいわゆるオタクである。彼には学校一の美人でスタイル抜群のラノベ作家や、こちらも学校一レベルのハーフかつ幼馴染(ココ大事)で同人イラレが周りにいながらも、学校一目立たない可愛い女の子をギャルゲーのヒロインにしてしまおうと目論む。この物語で重要なのは彼らが取り組むフォーマットが「同人」ということだ。アニメやゲームを作ると言った意味では『SHIROBAKO』と似たように聞こえるが、お仕事ではなく、あくまでも「趣味」を前提としている。だから、両者は似ても似つかないような作品になっている。お仕事上の付き合いや、夢を描く『SHIROBAKO』に対して『冴えカノ』は、もっとラノベちっく(ラノベ原作なので当たり前だが)な人間模様が描かれる。

いくら幼馴染が可愛くても、いくら美しいパイセンが自分を魅惑的に誘っても彼は揺るがない。この彼の揺るがなさは、強靭なオタクとしての性を感じる。人と同じように作品を愛せよ、いや、人よりも作品を愛せよと言わんばかりの行動には爽やかささえも感じる。だから、魅力的な女性キャラクターがたくさんでて、ちょっとエロいシーンがあろうが、青春アニメとしての爽やかさが残るのだろう。

冒頭で「ラノベが市民権を得てきている〜」と書いたが、僕自身は殆ど読まない。せいぜい『ハルヒ』と虚淵玄のを数冊くらい。後はラノベというと語弊があるのかもしれないが西尾維新を数冊と言った感じ。ラノベ原作と言っても、アニメになってしまえばアニメの見方が出来る。僕自身ラノベにかける時間がなかなか割けないのでアニメになってくれると嬉しい。そもそもラノベがアニメ化を狙っているという背景も、少なからずあるのだろうが。

ノイタミナ枠としても見やすい。そしてオタクの性ってこんな感じだよと世間一般にも伝えやすい。そんなアニメじゃないだろうか。普段「ラノベ」を読まない人にも勧められる青春モノとしての側面も合わせ持つ『冴えカノ』おすすめです。