ある日、僕はゴダールにウインクした 『さらば、愛の言葉よ』

なんだか今年はスマッシュヒットするような新作に出会えていない。「去年は『毒戦』があったなー」とか、危ない思考に陥りつつ、去年掲げた「来年はアニメたくさんみるぞー」と決めた目標にまっしぐらで、このブログもアニメのことばかり。そんなタイミングでゴダールの新作がやってきた。

考えてみれば『ゴダール・ソシアリスム』ぶり新作としてのゴダールだったかなあ。僕なんかは「とりあえず、ゴダールだし見るか」ってノリで、一番好きなのが『はなればなれに』でキャッチーなやつだし、見ていない作品が山のようにある。ゴダールを見ると映画って難しいな、感想を言語化するって難しいな、って普段から感じていることの10倍くらい実感するのだけど、『さらば、愛の言葉よ』見ていて、いつまでも尖った作品作れるゴダールってすげえなって素直に思ってしまった。

名古屋だと2Dだけだったんだkど、いいタイミングで東京来れたので折角なので3Dで鑑賞。3Dで面白かったのが、「右目」と「左目」で違う映像を見させるってところ。思わず「えっ!?」な反応で、ウインク*1をしながら、二つの映像を見やる。

具体的な例として、ツーショットがあり、そのうち一人が画面の外に出て行くんだけど、「両目」で見ると、映像が重なってボヤケて見えるわけ。それで、素敵な女性が異性に向ける全力のウインクならスクリーンもやる気がでるんだろうけど、僕がそうであるワケでもあるまいし、三十路くらいのおっさんがウインクする。そうするとなんと!二つのショットが重なっていることがわかる。

「パンクだこりゃあ、、、いやあ、それともアレブレボケの大道センセイか?」とか意味のわからないコトをブツくさ考えていると、一匹の犬が流されて行く…。

もうコレで完全に思考が停止し、ホークス、メルヴィル、ラング、ドストエフスキーボルヘス*2などの「映画史」や「書物」からの引用の連続。そして、度重ねるレイヤーの嵐に、これがゴダール開発のレイヤリングシステムや!(アウトドアブランドか!)とノリツッコミを入れていると、犬と赤ちゃんの鳴き声でスクリーンから意識が戻ってくる。

面白いところはたくさんあったんだけど、その諸処から「見ている」って言う感覚がずっとあった。犬が流れていれば、その先が気になってしまうし、二つの映像を重ねれば、どちらの映像も気になってしまう。映っているモノより、結果ばかりに意識がいってしまう。映画を紳士的に見ることなんて、僕には出来ないかもしれない……

そして、「見ている」という感覚よりも、84歳のおじいさんに完全に「見せられた」という感覚が残り、もっと紳士的に映画を見ようと思うのだった……。Adieu*3 ゴダール!!

写真よさようなら

写真よさようなら

*1:最近、笑っていないせいか表情筋が硬くてウィンクするのも困難だった

*2:パンフレットに引用元書いてありました

*3:「Adieu」はスイスのヴォー州では「こんにちは」という意味もあるらしい。(パンフレット–ゴダール・インタビューより–