急がば回れとはよく言ったもので 『ユリ熊嵐』第5話「あなたをヒトリジメにしたい」

誰しも先走って行動に出てしまって失敗してしまった〜という経験をしたことがあるんではないだろうか。『ユリ熊』5話は、銀子の紅羽への思い(欲望)が、前へ前へ先走り「ほら!見たことか!」と言ったような展開を見せてきた。

まず、1話〜3話の銀子とるるの会話シーンを思い出して行く。これまで銀子に対して、るるが一方的に話し、それを銀子が無視をする(無視をしながら話す)というシーンが目立っていた。今回5話を見ることで、これまでクールキャラに見える銀子であったが、実はそういったシーンで彼女は紅羽との「妄想」をしていたと推測できる。
そういった「妄想」のなか、紅羽への思いは、タイトルにあるように「あなたをヒトリジメにしたい」という「欲望」を強めていった。その気持ちの説明として、大胆にも紅羽の家に「引っ越し」するというように物語が進められ、思いを馳せる紅羽へ、好きな料理を作ってあげる「スキ」を実行しようとする。

『ユリ熊』が上手かったと感じさせるのは、1話から「妄想」をしている銀子をあえて「見せない」ことで、クールで、ミステリアスなキャラに見せているということだ。『ピングドラム』でも前半では、りんごちゃんをぶっ飛んだキャラに見せることで、ミステリアスな物語に見せることに成功していた。

それと、「ユリ裁判」のシーンで、これまでになかったショットが撮られていた。基本的には、彼女たちが裁かれる側なので、ローアングルであおるようなショットがこれまでもあったが、今回は、その上、ナナメ効果も使用し、更に彼女らに対して、威圧的なショットが増えていた。こういったショットも、彼女らをこれから先に待ち受ける状況(障壁)を演出していたのかもしれない。

視聴者は4話で「寓話」的に展開された”るる”の物語を見ることで、「私は最初からあなたが大嫌いで、最初からあなたが大好きだったんだ。」という言葉を理解し、これまでは難しそうな物語に見えていたが、実はシンプルな話なのではないか?と感じる。そして、今回は、実は銀子がスキな子のことを考え、それが故、敵の罠にはまってしまう普通の女の子であると思うのだ。熊や百合であることの前に、実は普通の物語であるという説明を、4話〜5話間で行ったと思えた。

また、こういったシーンでもハートを描いてみたりと細かい演出凝っていたりする。今後の物語に期待をしながら、この辺で終わりにします。

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ユリ熊嵐 上

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