アニメの「心情描写」表現について 『SHIROBAKO』第16話「ちゃぶだい返し」

前回までのお復習いをすると、武蔵野アニメーションが『三女』を獲得し、木下監督の絵コンテもこれまでよりも早く上がり、やる気も上がってきたところで、『三女』の原作者から、キャラデザNGを受けてしまって、さあ、ここからどうするムサニな引きでした。

今回面白かったのは、木下監督が、3Dや美術に対して「○○が主役だから」っていいながら、『三女』のテーマの一つになる「心情描写」を大切にしていきたいと言っていたところ。その発言に対して、第16話は、そんな「心情描写」が上手く演出されていたと感じました。

「心情描写」わかり易いところでいうと、アニメに限らず映画でもよく使われますが、まずは「雨」。「雨」は前後に、何かよくない兆しがあるときに使われる描写の一つですが、今回は1stカットから「雨」描写を挟み込んできました。

このあと、原作者がキャラデザに納得いっていない旨のメールのシーンになるのですが、ここまで順調できていたなか「ちゃぶだい返し」にあってしまう。これは明らかに相手側の担当編集の仕事の適当さを露呈した瞬間でしたが、この後も雨の演出はとまらず、キャラデザを修正しても、「NG」の回答が来る。

井口さんの苦悶の表情、そして雨。担当編集に電話をかけても、雨のシーンは続きます。
担当編集が使えないことの象徴のようなショットにも見える。

また、「雨」意外の描写でも、まさにアニメーションらしいのが、例えば、イデポン宮森やゴスロリ様。

これは、実写では嘘っぽく見え過ぎてしまうけど、アニメなので嘘が嘘として成立してしまうというアニメならではの技だと思う。それと、井口さんが苦悩の状況から脱する為に、ゴスロリ様の過去話へ。バッティングセンターのシーンなんかは、さすが、小笠原だけに小笠原のフォーム!そして、ドリームボール!(これは流石に吹いた)アニメならではのシーンが続いて、井口さんをなんとかしてあげたいゴスロリ様の心情が伝わる演出になっていました。

また、ゴスロリ様に気合いを入れられた後の監督とナベPのカーチェイスシーンも彼らの「絶対アイツ捕まえてやる!!」という心情がダイナミックに表現されていました。みゃーもりも1クールではダイナミックなカーチェイスシーンしていますよね。

そして、井口さんの心が晴れた後の建物煽りショット。

すっかり彼女の気持ちと反映されたショットでした。
アニメを見る上でも基本となるような演出が随所に見られたいい回でした。

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