「インファナル・アフェア」と「男たちの挽歌」をジューサーで混ぜたやつ 『レクイエム 最後の銃弾』※ネタバレあり

ブレッソンとか見ていると「映画に感情表現は必要ないんだー」とか納得することがあるんだけど、真逆に過剰さで訴えかけてくる香港ノワールの作品を観て「映画に過剰な感情表現あってもいいな」と納得してしまう。でも、ジョンウーは世界に行ってしまった。じゃあ、ジョニートーは?ってなるんだけど、『ザ・ミッション』以降のジョニートーはジョンウー影響の過剰表現を抑え、様式美で構築された『エグザイル/絆』でスタイルを確立させたし、今年の「毒戦」なんて、また新たなチャレンジをしている。「じゃあ、現代香港ノワールの後継者は誰ぞや?」と立ち上がったのが、ジョニートーの下にいたベニーチャン。

『レクイエム 最後の銃弾』は、公式HPで語っているように、『男たちの挽歌』と『インファナル・アフェア』の影響下にある作品。言ってしまえば、『インファナル・アフェア』『男たちの挽歌』のプロットを頂戴したような作品。

ストーリーは、旧来から仲の良い3人組の一人が麻薬組織に潜入捜査し、麻薬王を捕まえようとするお話。
まず、潜入捜査は『インファナル・アフェア』。だけども、3人組の会話シーンは完全に「挽歌」のオマージュ。そして、潜入捜査をしている者は妊婦の妻を持っているし、彼ら以外にも大切な者が存在するのも「挽歌」っぽい設定。それと、何よりこの映画の中で起こっていることがものすごく過剰だ。

麻薬王を抑える為に、バンコクに向かい、いざ犯人たちを追いつめたというシーンで、マフィアグループのヘリコプターが到着しタイ警察もろともマシンガンで一人残らずぶっ殺す。コレでもか!と言わんばかりの見せ場で、音響もズダズダ・バコバコ決まりまくってて迫力がある。また、こういったド派手のシーン以外では、人物たちの感情が溢れ出しそうになると、ベタなBGM流したり、三人が喧嘩すると彼らが昔から歌っていた歌を歌わせ仲直りさせたりと、過多と思える演出に埋め尽くされる。

それと、バンコクから瀕死の状態で香港に戻ってきた後に起こる出来事で、ジョンウー的「なんじゃこりゃあああああ」トンデモな展開がある。これは、『○たちの○』のまんまなんだけど、逆に冷静になって吹きそうになった。まあ、ご愛嬌と言ったところか。

そして、ラストのアクションシーン直前の三人のあるシーンでは、「挽歌」や「インファナル・アフェア」のフォロワーの到達点へ達していたと思うし、ラストは『男たちの挽歌Ⅱ』と言ったところか。三人で歌を歌い、ギリギリまで惹き付けて「キックオフ」する。「挽歌」の影響ながら、現代アクションのテンコ盛りといったような感じだった。


ただ正直、ココまでオススメ作品デス!的な雰囲気で書いたわりに、僕はあまり揺らされなかったんです。まず、上映時間の長さが134分もある。贅沢すぎるけど、トーさんなら20分〜30分削れた気がするし、ウーさんなら更にテンコ盛りな時間を与えてくれた気がしてしまって…。それと、映画の中で起こっていることは過剰なのですが、それが画面に反映されないというか、エモーションに繋がらないことが多かった。ちょっと映画に入り込めなかったということでしょうかね。なんか撮影ばかり気になってしまって…アクション楽しめばいいのに、頭で考え続けてしまった感があります。まあフォロワー枠を超えていないけど、いいシーンもありますし「挽歌」のフォロワーで気になったらチェックを。以上