「ゴジラ」を巡る冒険『GODZILLA ゴジラ』※ネタバレあり

ゴジラ」ファンであったけど、何故かそこまで期待せずという気持ちでしたが、傑作映画『モンスターズ』を撮ったギャレス・エドワーズ監督のGODZILLAIMAX 3Dで見てきた。

今作は「ファイナルウォーズ」(04)ぶりのゴジラとして、当初から54年の初代「ゴジラ」(本多猪四郎)を意識して作られたとチラホラ聞いていました。ただ、実際どうだったかというと、初代ゴジラではなく、どちらかというと「平成ゴジラシリーズ」(vsシリーズ)を意識していたように感じられました。今回の世界では、水爆実験でゴジラは生まれた訳ではなく、ゴジラを殺そうとして水爆を行ったという風に改変されており、生態系の頂点に立つものとして存在するように描かれていた。この辺はゴジラファン的にどうかな?賛否両論じゃないでしょうかね。

そんな改変はありましたが、今作で意識されていたのが「客観的」だったと言うこと。作り的には、『モンスターズ』の監督だなーと感じるように、なるべく「ゴジラ」を終盤まで見せない。又は、TVのニュース、車やバスの窓ガラス越し等の何かを挟んで少し見せる。という演出を何度も繰り返していた。人間の肉眼で捉えるときは、フレーム枠いっぱいにゴジラの身体、皮膚、尻尾を映し出し、「何かとてつもないものを見ている」という気分にさせ、非日常感を煽るようにしていた。あまりにも非日常過ぎ、それが中々現実のものとは感じ取れない、スクリーンに映し出されているものを「ただ」見ているという気にさせる。あくまでもそれを見ている。その感覚は、個人的な体験としても、記憶に新しい3.11の接し方とも近かったように感じる。あの時も、僕は遠くから「ただ」見ているに過ぎなかったし、TVニュースなどのフィルターを通して現実を見ていた。個人的には、そんな感覚に近かったのだ今回のゴジラは。


原子力発電所の事件や、危険区域など、ギャレス・エドワーズは少なからず3.11を意識していたと思う。ゴジラのテーマとして元々は人間の「脅威」なる存在である。例え3.11でなくても、近年のデカい災害と言えばスマトラ島沖地震があるし、原爆といえば広島、長崎は勿論のこと、チェルノブイリなどもある。そんな脅威に今回のゴジラはなっていたと思うし、実際に、僕は災害を遠くから見ている気持ちになったので、監督の勝利だと思った。それと、災害の混乱時は交通網や電話が繋がりにくい。そんな混乱は、電話を入れても留守電になってしまうだったり、MUTOによる停電などで不通を表現している。こういったフィルターを通す演出、連絡網が不通になる演出など、災害時の混乱を上手く表現出来ているし、根本的なゴジラのテーマからは逸脱していないと感じた。


作品としては成功していると思うし、わりと好きだけど、イマイチ盛り上がらなかった(自分の中で)んですよね。なんだろう、こういった表現方法は大いに賛同するし、面白いなーと思ったんだけど、やっぱりね。ドンパチ足りないのと、人はたくさん死ぬんだけど、絶望感足りないんですよ。怪獣同士のドンパチは10分くらいでもいいから、人間ドラマを挟めないでやってほしかった。絶望感は、「ガメラ3」までやれとは言わないけど、鬼気迫るものが足りなかったな〜という気がする。確かに人は死んでるんだけどね。でも「ゴジラ」の造形は100点でもいい。あの巨大感とノシノシとした動き、あの熱線といい、なかなかかっこ良かった。でも、ギャレスはMUTOが好きなんだろうね。子供が殺されるところとかエメリッヒ版のオマージュでしょ。そう言うところもいいし「平成ガメラシリーズ」を、ミックスしたような造形とかも痺れるね。


まとめると「ゴジラ」というか、「ゴジラ」を巡る冒険という感じ。それと、3Dは殆ど意味ないので2Dを推奨します。やっぱり無理にIMAXでやらなくてもいいんだよね。やるなら、IMAX2Dにしてほしかった。

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