ジャック・タチ映画祭に行ってきた!

先月の『天国の門』といい、新作が全く消化出来ないでいるのですが、「ジャック・タチ映画祭」これは逃せぬということで、例によってシネマテークで見てきました。本来であれば、6作全て見ようとしていたのですが、先日のグラインドバスターズ*1参加後から、風邪をぶり返してしまい3本だけに…。その中で個人的に面白かった2本に関してさら〜っと書きます。


トラフィック』(1971)

これが記念すべき初ジャック・タチとなった訳だったのだけど、すごく面白かったです。話はものすごくシンプルで、ある自動車会社がアムステルダムで開催されるモーターショーに出展する自動車を運ぶだけの話。

「○○を○○まで運ぶ」という話と聞くと、アクション映画で言えば、ハラハラドキドキのカーチェイスシーンや、高速トラックの上の死闘とか、中開けたら時限爆弾だったとか、スリラー要素も掛け合わせたような映画がいくらでも出来ると思うんだけど、ジャック・タチはあくまでも「コメディ」映画。

例えば、新車をトラックで輸送中、トラックがパンクしたり、ガソリンがきれたり、書類不備で警察に連れて行かれたり、最後には新車を壊してしまったり…。軽い事故だったり、わりと重要な事件もライトなコメディに昇華させている。コメディ演出は他にも、渋滞の中、車中を覗くと同じ行動をしている(例えば鼻かいている)人を映したり、一台車がぶつかれば、これが何台も何台も立て続けにぶつかったりする。この映画は、車がぶつかるように、人と人とがぶつかる(会話する)ことで映画が生き生きするな〜と感じた。

それと同時上映がジャック・ベールの『陽気な日曜日』。これは観光客をだましてツアーさせ儲けようとする話。これも車の話だが、全てコメディに昇華されてて面白かったです。



『のんき大将 脱線の巻』(1949)

ある小さな村のお祭り期間中のお話。これもコメディ映画なんだけど、実はメッセージ性がなかなか強い映画なのでは?と感じた。

この村の郵便配達人は、とても人が良くて、自分が仕事中にも関わらず祭りの手伝いをしたり、様々な人との絡みがある。ただ、お人好しのところもあって、気づけばお酒を飲まされまくったり、アメリカの郵便配達の映画を見た村人たちからバカにされたりしてしまう。

それに奮起した配達人のフランソワ(タチ本人)は、「アメリカ式の配達だ!」と無茶苦茶な配達をしたり、時にはロードレーサーたちよりも早く走り配達を続ける。でも、最後には失敗してしまい、怪しい老婆に「急ぐばかりが能じゃない。アメリカ人はアメリカ人。いい手紙なら待つのも楽しいさ」と、振り返ってみるとコメディ映画だったけど、アメリカ敵視が強い映画だなーと感じた。

物事を急ぐことを、配達人によって描かれているけど、祭りは全くの逆の行為。そこからしてもジャック・タチのメッセージを感じる。最後に子供が駆けていった先にはどんな世界(フランス)があるのだろうかと、少ししんみりした鑑賞になった。また、物語の終盤は同時上映の『郵便配達の学校』と構図や若干演出が違うだけで、殆ど同じ。同年に作られているので、この映画の土台として作られているのかな〜なんて思いました。


コメディって言うと、「ドリフ」とか、海外なら「Mr.ビーン」くらいしか思い浮かばないくらいコメディ見てないんですけど、ほぼアップを使わず引き画で役者の動きで笑わせるっていうのは、とても映画的だな〜と思いました。それと、日本劇場初『パラード』に関しては、毛色が少し違う映画で、サーカスを見せられているんだけど、それをタチ式コメディで色づけしている感じ。少し、ビックリして、若干ウトウトしてしまった。ドキュメンタリー映画ちっくでしたね。観客・出演者の掘り下げかたは違うけど『今宵、フィッツジェラルド劇場で』や、全然違う話だけど、『オーケストラ・リハーサル』的な作品を想起しました。

いやー楽しい映画祭でした。『プレイタイム』を早くレンタルして見なければ!じゃんじゃん。

ジャック・タチの世界 DVD-BOX

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*1:名古屋で毎年開かれるグラインド・コアの祭典