田舎から出てきた青年の狂った人生/根岸吉太郎『狂った果実』を見た。

秘宝EXのアナーキー日本映画史1980−2011」を読んでからずっと見たかった根岸吉太郎狂った果実が苦心1年くらいでやっとゲオのネットレンタルで借りれたので、さらっと書きます。

ストーリーは、昼はガソリンスタンド、夜はピンサロで働く青年と、いわゆるイケイケのお姉ちゃんが出会い互いに恋に落ちていくというもの。そして、青年はだんだんと女に日常を狂わされ、最後には人生まで狂うというファムファタルに迷わされる青年のお話。

まず観終わった感想として、ヘンテコな映画に感じられた。青年は彼女に一目惚れしてしまい、路上でオナニーをしていところを彼女に見られ、車でドライブをしていると彼女に欲情し、いきなり強姦(もちろん土砂降りの雨)し、彼女にキレられ逃げられる始末。しかしながら、彼女は青年の働くガソリンスタンドにちょっかいを出しにいき「今日も襲われたい。」なんて言葉にしてしまう。

最終的には女に狂わされ人殺しまでしてしまうのだが、バイオレンスシーンは思ったより狂っていない。それよりか、青年が田舎のお母さんに電話するシーンのほうが印象的に混入され、バイオレンスにしてもポルノにしても過剰すぎるほどには表現されていないのが特徴。

ロマンポルノではあるが、SEXシーンはそこまで重要というか、それ以上に重要なシーンはお母さんに電話するシーンなのかな?と感じた。SEXシーンはあくまで方法であり、田舎青年が都会で背伸びして生活をして親にはいい格好して、女と出会う青春映画なのだ。そう見ると、電話のシーンが青春映画としての機能ということに気づき、ポルノは味付けにまわっている事に気づかされた。

青春映画としての機能として女の行動もすごく重要だった。それまで義理父とSEXをして、都会者ばかりと遊ぶ狂った生活をおくっていた中、不意に現れた田舎青年にどこか引っかかる。これまでとは違う経験なので、どう接すばいいかわからずちょっかいを出してしまう。彼女も同じく青年に惹かれていたのである。ただその結果、惨劇を引き起こしてしまった。狂った生活の中に、いきなり普通の人間らしい人間に出会ったとき、どう壊れているかを表現したかのよう。

また、この映画では何度か青年のランニングシーンが導入される。「運動」も青春映画には必要不可欠なもので、学園ドラマなら部活や授業で運動を表現すればいいが、都内で目的なくフラフラしている青年にはランニングをさせる必要があった。ランニングに突発的なSEX、バイオレンスは、青春映画としての最低限の運動量と感じた。そして、ラストシーンでも青年はランニングをして、潔く警察に向かいかけていくのである。

衝撃的な映画と言ったら違うかもしれないけど、青春映画としてベストに入りそうな、そんな映画でした。面白かったです。それと、蜷川友紀の不機嫌そうな顔良かったです。

狂った果実 [DVD]

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映画秘宝EX爆裂! アナーキー日本映画史1980~2011 (洋泉社MOOK)

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