その鞄の中身は?/METALLICA『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』※ネタバレあり
世界規模の人気を誇るバンド、メタリカのライブが始まろうとしている会場。数えきれないほどの観客が押し寄せ、彼らの怒号と熱気が融合していく中、ツアースタッフの青年トリップ(デイン・デハーン)は、奇妙なミッションを与えられる。それはライブが終了する90分以内に、バンドメンバーにとって重要なカバンを取ってくるというものだった。地図を手に街へと飛び出すトリップだが、そんな彼に予想だにしないトラブルが次から次へと降り掛かってくる。(yahoo映画より)
本年8月サマーソニック13にて、3年ぶりの来日公演を果たし日本中のメタラーを興奮させたメタリカ主演の『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』が公開されました。本作は、カナダのLIVE映像(勿論映画用に演出されている)と今年『クロニクル』『欲望のバージニア』『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』に出演したデイン・デハーンがメタリカのツアースタッフとして、公演中にエンストしてしまったトラックに向かいメタリカの大切なものが入った鞄を取りにいくという二つの話を交錯させています。ただ、「LIVE映像:鞄を撮りにいくまで」が8:2くらいの比率なので正直メタリカファン以外の人が観にいっても面白くないと思います。LIVEドキュメンタリーとかのノリで見てしまうと話が面白く感じないだろうし、あのストーリーはファンだからこそだなと僕は感じました。
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まず、メタリカのLIVEだけでいえば、もちろん映画用に撮られているわけなのでファンにも少なからず演技がかっています。演技はいってるからやだ!っていう人は少なからずいる訳ですけど、メタリカのファンが「メタリカと一緒に映画に出れる!」と思ったらどうでしょうか…?そりゃいつも以上に気合い入るし、正直俺も出たい!!と感じましたよ。なんせ、#1The Ecstasy Of Goldのイントロが流れた瞬間の会場の一体感、薄暗い映画館からも伝わってくるファンのにやけた顔、そして#2Creeping Deathと定番ソングで一瞬でファンの心を鷲掴み。刻むジェイムズ、荒ぶるラーズの後頭部、弾きまくるカーク(いつもより上手い?)、ロバートのゴリラスタイル…全てがいつものいや、いつも以上のメタリカパフォーマンス。もちろんIMAXシアターということもあり爆音はLIVE映像には映える。#11Master Of Puppetsではモッシュピットが形成され演技しているファンたちのテンションも最高潮に…と、LIVEだけで言えばいつも以上にかっちりしたパフォーマンスだし、カメラワークも文句なしだった。
この辺からデイン・デハーンの物語を書かないとお話にならないので、絡めていくと、まず鞄をとりにいくデイン・デハーンは、ワゴン車のなかで薬を飲みます。まあ、デハーン君の役名が”トリップ”というところと、デハーン君の眼光鋭さを加味すると自然な気がしないでもない。その後、騎馬隊に追いかけられたり、『ウォリアーズ』や『ニューヨーク1997』的な不良たちが警察と抗争をし始めたりこの世のものではない体験をします。これは恐らくメタリカLIVEでの高揚感と薬でのトリップを考えると、デイン・デハーン君の妄想なのではないか?とも感じます。そして放り出された人形は?と考えるともしやクリフ?…を人形で表現しているのかとも思えます。そして、鞄を開けたデハーン君はものすごくビックリします。これは何を示唆しているのでしょうか?とにかくデハーン君は騎馬隊に殺されそうになりそうになりながら命がけで鞄を守り、不良との抗争(ここで#12Battery がかかる演出マジ見事)では、ガソリンをかぶり炎をまとい不良に突っ込んでいきます。そして最終決戦ではデハーン君が街を破壊!(『クロニクル』よりもおぞましい破壊)するとともに、メタリカのステージが崩れ一旦LIVEが中断します。普通なら観客とメタリカをすぐに避難させなければならないのですが、ステージも壊れジェイムズが「怪我したやつはいないか?」と無事を確認したところで、「昔はよく暗いガレージで演奏していた、派手な演出は要らない…キルエムオールのころだ…!」と#15Hit The Lightsを演奏。これはずるいwwwずる過ぎる演出(あのLIVEとしても最初から考えられた演出かと思います)と思いつつちょっとうるっとしてしまいました。笑
そして最後のシーンではボロボロになりながらにもデハーン君は鞄を無事に届ける。そこでメタリカは#16 Orionを演奏。まさに派手な演出はいっさいなく、椅子に座りながら弾くメンバーでエンドロールへ…
さて、メタリカが何故大量なスタッフを抱えているにも関わらず、デハーン君に大切な鞄をとりにいかせたのでしょうか?それはメタリカというバンドを考えたときに、理由がわかる気がします。ジェイムズだって苦労しているし、ムスティンのこと、クリフのこととたくさんの苦節がありながらもここまでやってきて、世界的モンスターバンドまで成長した。このメタリカの人生をデイン・デハーン君に体験させてあげたかった(更生させたかった)のではないかと僕は感じました。オープニングからデハーン君が会場入りするまでに彼はメンバーとすれ違っており、メタリカ側がデイン・デハーン君を見出し(薬から更生させたかった)、大切な仕事を頼んだのではないかと思います。それが鞄の中身にも直結してくるのではないかと。
さて、鞄の中身は何?に関しては諸説あるようですが、個人的には『ヘドバン Vol.2』の薫インタビュー時にも書かれていましたが、”メタリカの本質”ってのが一番しっくり来るし、色々な解釈できる。「一度は置き去りにされたもの」と考えると、彼らの作品と対比させるとデスマグでレギュラーチューニングに戻して、初期作品ファンを喜ばせた…(まあ作品の好き嫌いありますが)そして、キルエムオールの30周年(#15 Hit The Lightsが演奏された事)そして、ラストの#16 Orionとクリフがいたからこそと呼ばれるような名曲の演奏するという演出。そして、ファンがいたからこそのメタリカ…そんな風に感じるからこその”メタリカの本質”じゃないかと思いました。*1
ただ、映画としてどうだったかと言うと、とんでもなく長いミュージック・クリップかLIVEビューイング的な感じがしないでもなかったです。それと、映画がメタリカの力を超えられているとは感じなかった。でも、メタリカファンなら必ず楽しめると思うし、個人的には語れば語るほど今年のベストテンに純粋な気持ちで入れたくなる映画でした。メタリカのLIVEを2,200円で観れると思えば安い!是非おすすめです。さあサントラ買いにいかなきゃ!
このキル・エム・オールのツアーT買おう。ーセットリストー
#1 The Ecstasy Of Gold
#2 Creeping Death
#3 For Whom The Bell Tolls
#4 Fuel
#5 Ride The Lightning
#6 One
#7 The Memory Remains
#8 Wherever I May Roam
#9 Cyanide
#10 …And JusticeFor All
#11 Master Of Puppets
#12 Battery
#13 Nothing Else Matters
#14 Enter Sandman
#15 Hit The Lights
#16 Orion
- アーティスト: メタリカ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
- 発売日: 2013/09/25
- メディア: CD
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